黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経記者の未来妄想図。他。

【未来予想図 選択的夫婦別姓】(上)
ほころぶ家族の絆…お父さんだけ違う姓 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/364142/

【未来予想図 選択的夫婦別姓】(中)
自立からすれ違い…米国の教訓 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/364610/

【未来予想図 選択的夫婦別姓】(下)
廃れる先祖への敬慕 戸籍も墓も個人単位 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/365018/

 3日から5日にかけての、いずれも安藤慶太記者による連載記事です。上中下なので3日間待ってみましたが、いずれも期待に違わぬ内容でした。keyword:安藤慶太をさっそく作ってる人がいるし(笑)。なお、詳細にツッコミを入れ始めると対象の記事より長くなってしまうので、ここではつまみ食いするにとどめます。
 3回のうち、(上)は小説風の文章で3編のエピソードによるオムニバス、(中)はドキュメント風、(下)は論説風と、形式や文体をいちいち変えているのは、これは何かを意図しているのでしょうが、なにを意図しているのかはさっぱりわかりません。文体の書きわけを仕掛けるというのは、小説を書き始めたばかりのころに誰でもはまる道ですけどね。学生時代あたりに文章の道をこころざし、こっそり小説などを書きながら、社会人として新聞記者の職を選ぶ人がいます。小説をこころざしながら新聞記者を経て、みごとに小説家として活躍するようになった作家もいて、産経新聞の大先輩である司馬遼太郎がそうですね。一方、たとえば司馬の部下でのちに「週刊サンケイ」(「週刊SPA!」の前身)の編集長になった三浦浩氏は、学生時代に高橋和己や小松左京氏とともに同人誌活動をして「京大三羽烏」と呼ばれていた人ですが、高橋や小松氏のようには小説で芽が出ないままでした(前述のとおり編集者としては成功しており、『さよならジュピター』など多くの小松作品のバックアップにも尽力した方です)。記事をいろいろ読んだかぎりでは、たとえば石橋文登産経新聞政治部次長もそういうタイプではないかと睨んでいます。石橋記者の“小説風の記事”は、あまりに空想的ではあっても、小説を書くことに慣れた人の文章だと感じます。しかしそういう意味では、安藤記者が同じように小説家をこころざして(あるいは挫折して)新聞記者になった人なのか、少なくとも今回の記事では判断できません。だって、あまりに文章がド下手なんだもん。文体ひとつとっても、小説風に通すのか新聞記事として書いているのか、主観描写と客観描写の視点の設定すら曖昧で(これって小説を書くときにも報道文を書くときにも、基本中の基本ですよ)、読者は混乱するばかりです。「後で後悔」だの「基礎的な基盤」だの、(中)の末尾で「USAトゥディ」記事の引用に「(米国女性は)」という主語を補うことでわざわざ重複主語の文を作るだの、いったいどういう文章修行を経てここまで独創的な文体を開発したのでしょうか。
 内容についても、【未来予想図】というタイトルに反して「空想図」や「妄想図」だろうとか、展開が不自然すぎるとか(たとえば(上)の2番目のエピソード、すでに夫婦別姓制度が始まって十数年が経っているはずなのに、なんで表札を見て「同居離婚」「家庭内別居」と思う人がいるんでしょう。現在でも、通称を使用している夫婦は別姓の表札を掲げているはずですが、そういう想像力もないのでしょうか。なにを考えてこんな描写を入れたのでしょう)、いったん別姓を選択したら「同姓に戻すことは許されない」などという妄想を超えた捏造レベルの記述とか(いったんペーパー離婚してから再婚すりゃいいじゃん)、米国の実情を「取材」したんならもうちょっと事実に基づいて書けよとか、枚挙にいとまがありません。
 安藤記者は必死になって、「夫婦別姓で起きる悲劇」を考えたのでしょうが、(上)のエピソード1と(中)は夫婦の対話、(上)のエピソード2は親子の対話が足りないだけの(ついでに(中)は夫が馬鹿すぎという要素もありますが)話にしかなっていません。別姓を選択した家庭では家庭内のコミュニケーションが必ず失われる、という先入観でもあるのでしょうか。(上)エピソード3にいたっては、これは選択的夫婦別姓とは直接関係なく、民法改正案に同時に含まれる非嫡出子差別の禁止を扱ったものですが、今でも非嫡出子に一定の相続権があることを(知ってか知らずか)無視した内容で、「民法改正がなければ起きなかった悲劇」という設定自体が破綻しています。
 今日の(下)も似たような調子で、イエが崩壊することで先祖の墓を守る人がいなくなる、という内容ですが、これも【未来予想図】ではなく、かといって妄想でもなく、すでに現実です。それはイエ意識の崩壊によるものというより、長年続いてきた少子化傾向に伴って一人っ子同士の夫婦が増え、それも代を重ねつつあること、あるいは子供の以内夫婦、生涯単身者の増加という現状で、無縁墓の増加や個人墓は、実際に起きていることなのです。まさか大新聞社の記者*1が、そうした認識を持っていないとは思えませんが、いったいこの人は、世の中や現実のなにを見ているのでしょう。常に現実以外のものを見ていると仮定すれば、小説家志望ではないのにこういう妄想図を描いてしまったのは、理解できますが。

朝鮮学校 “北崇拝”に税金出せるか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/365074/
 北の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が無償化対象からの朝鮮学校除外を「無分別な民族教育弾圧行為」だと非難する論評を載せたことも、同校が北の強い政治的影響下にあることを物語っている。

 本日の「主張」についても、簡単に済ませておきます。体制の傀儡メディアとはいえ、教育への圧力を非難することが、そのメディアが学校に政治的影響を与えている証拠なら、産経新聞が「公教育再生」「日教組排除」を言うのも、公教育が産経に支配されている証拠ということになります。もちろん、これは背理法ですが。

[politics]自民党下野なう

自由民主党 役員表
http://www.jimin.jp/jimin/yakuin/yakuin-1.html

 どうでもいいことを発見してしまいました。ふとしたきっかけで自由民主党の役員表を閲覧したのですが*2、現在、国家戦略本部本部長や道州制推進本部本部長が空席になっているんですね。もはや国家戦略を担っているわけでもないし、国会議員の数そのものが激減してしまったので、いろいろ後回しになってしまうこともあるのでしょう。しかしそれらとともに、北朝鮮による拉致問題対策本部本部長も空席になっているのは、これはどうしたことでしょう。拉致問題は後回しでいい、真剣に取り組むつもりはない、という姿勢の表れでしょうか。なお、鳩山内閣には拉致問題担当大臣が存在しますが、自民党政権時代にこの肩書きはありませんでした。

*1:ただし安藤慶太記者は産経新聞専属ではなく、少なくとも最近まで月刊誌「正論」編集部に所属していて、過去の記事もその手のものがほとんどです。昨年12月には、「対馬が危ない!」イベントの実行委員にもなっています。 d:id:pr3:20091228:1262012086

*2:例の憲法改正推進本部のメンバー表がないかと思ったのですが、サイトでは見つかりませんでした。サイト内検索をすると、「新憲法制定推進本部」というページタイトルの、『マンガ 行政改革って?』なる代物が出てきます。http://www.jimin.jp/jimin/gyo/comic/index.html