黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経、草案を一部報じる。他。

予算案衆院通過 利益誘導政治を憂慮する - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/364188/

 3日付。民主党小沢体制への批判はもっともですが、自民党政権時代に、利益誘導政治を一度でも批判したことがあったのかと。いや、たぶん一度や二度は批判していただろうと思います。田中派竹下派支配時代に、清和会の立場から。

【くにのあとさき】東京特派員・湯浅博 「覇者の驕り」にご用心 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100304/biz1003040318002-n1.htm

 全体的になにが言いたいのかよくわからんコラムなのですが、かつて世界の覇者だった米国車を例にとって、品質を高めるための技術開発は大事だ、というようなあたりなのでしょう*1。ひるがえって日本では、という結論部分で、事業仕分け作業における例の「世界で2番目のスパコンではダメなのか」という発言とともに京速計算機事業が停止と判断されたことを、近視眼的だ、技術開発に反する、とけなしているのが、まったくわかりません。というか湯浅特派員は、この発言の前後のやりとりも背景もまるでわからずに、報道の見出しになった発言だけを勝手に解釈しているんじゃないでしょうかね。「2番目でも京速を実現することに意味がある」と担当者が答えていればあるいは予算が通ったかもしれない、ということは、すでにさんざん指摘してきました。

天皇元首」「外国人参政権」など検討 自民が憲法改正で論点整理 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/364943/

 自民党が、2005年憲法草案をベースに新たな憲法草案を5月までに作るとして、その論点をまとめたというニュース。「あるべき国家像という学術的・学理的な側面から憲法論議を進めたい」のだそうですが、学術的・学理的には、憲法とは主権者(国民)が国家を制限するもので、国家が国民を制限するものではありません。しかし自民党2005年草案*2は、主権者国民のあらゆる基本的人権、その生存権すらも、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り〜尊重される」、言い換えれば、「公益の名のもとに生命を奪われても文句を言うな」と定義しています(第13条)。当時から、「こいつら、憲法や民主主義を根底から理解していないぞ」と評判だったこの条項の見直しは、今回の検討項目に含まれていません。これをベースに次の草案を作ることは確定しているのでしょう。
 他にも「天皇の国事行為に「承認」の文言は不要」など奇想天外な提言がされていますが、なかでも、産経の見出しにはなぜか含まれていませんが、「民主主義国での兵役義務の意味と、軍隊と国民の関係を検討する必要があるのではないか」はあきらかに徴兵制導入を意識しており、あのニュー速+ですから祭になっています。*3
 いやもう、自民党が極右に走って自爆するのは、どうぞご自由に、なんですがね。これを受けて産経の論説がいかに舞い上がった代物を書くかと思うと、わくわくして今夜は眠れそうにありません。

自民党は「保守」で何を守るのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/364634/

 いや実はすでに、3日付「正論」欄がこれです。和田秀樹氏は、なぜかタイミングだけには恵まれていますよね。内容は、自民党は「日本型保守」、戦後保守、いわゆる保守本流に立ち戻れというもので、和田氏の主張としては珍しく賛同できるものでした。自民党の極右化を(山系の報道を通して)見るのも楽しいのですが、このままだと民主党がライバル不在の独裁政党になっちゃいますからね。というか、保守本流がそのまま民主党に流れ込み、自民党が(左右反転しただけで)政策担当能力のない社会党と同じ地位を占めるという55年体制の再来は、つまらないとかいう以前に一種の悪夢ですから。

*1:トヨタが米国製部品を採用せざるを得なくなったのが悪い、みたいなことも言っていますが、下請けの品質管理も元請けの大事な仕事です。ていうかそれがトヨタの売り物だったわけで。

*2:自由民主党 新憲法草案 http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051122_a.pdf (PDFファイル)

*3:アップロード前の追記:産経以外の各社が「徴兵制検討」と報じたことを受けて、大島理森幹事長が否定の談話を発表しました。http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100305k0000m010084000c.html 。「現状を整理しただけであって検討するわけではない」と弁明しましたが、そうすると他の項目と矛盾します。また、上記の生存権否定を憲法に入れている民主主義国家があるのかどうかも、ちゃんと整理してほしいものです。