黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄の暴力観。他。

 プライベートでいろいろあって遅れてしまったのですが、12日分です。

産経抄】2月12日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/356598/

 文章の中身に一貫性がなさすぎて、読み返して意味を把握しようとするのが苦痛でしかたありませんでした。とはいえ、あんまり凄いので紹介しないわけにもいかないし。とにかく順を追っていくと最初に、神奈川県の駅のホームで悪ふざけしていた高校生を、その場にいた警察官が叩いて傷害罪となった事件の話です。産経好みの「美談」ですね。社会規範を守らぬいまどきの若者を殴ってでも矯正する正義の警察官。悪いのは高校生なんだから怪我ぐらい当然だ、と。その行動を支持する声が4000通も寄せられたということも紹介されています。そのうち、産経読者は何割ぐらいいたんでしょうか。神奈川県の購読率3.20%よりは多かっただろうという気がします。ところが実は、と来ます。ところが実は、高校生はすでに悪ふざけをやめていて、反省している被害者を警察官が問答無用で殴りつけたと。社会規範とか関係ない(というか逆の)、ただの暴力オヤジの話だったというのです。この第2段落まででもう、このコラムがなにを言いたいのか、まるでわからなくなってしまいます。それにしても、産経がいままで報じてきた「美談」って、実は大半がこんなのじゃないのか、という気がしてきてなりません。
 このへんで、テーマが「警察への期待」である(少なくとも筆者はそう思っている)らしいことがうすうすわかってきます。続いて、宮城県で先日起きた殺人・誘拐事件についての話になります。18歳少年が元同棲相手の18歳少女を「取り返す」ため、仲間とともに彼女の家に押し入って家族と友人を殺傷し、少女を誘拐した、というような事件です。この事件で、被害者側の名前が大々的に報じられるのはおかしいなあ、と思うのですが(もちろん、少年の名前を公表しろという意味ではありません)それはともかく、背景には少年によるDV(パートナーへの暴力)があったようで、また形としてはストーカー犯罪の類型にも近いといえます。ここで、先ほどの「警察の行き過ぎ」と「積極的介入による予防への期待」の話につなげたつもりらしいですが、本当につながっているのか、よくわかりません。さっきのはただの暴力オヤジの話じゃん。事情がわからない時点での「市民の期待」の話だとしても、ストーカー型の犯罪は平手打ちで解決するたぐいのものではありませんし、いずれにしろ、平手打ちで解決する人間社会の出来事なんてありません。あるように見えても、それは単なる結果論です。そして、先に述べたように事件の背景にDVがあったことを踏まえると、平手打ちで解決するという発想こそがこの事件を生んでしまったのですが、産経抄にそういう認識はあるのでしょうか。もちろんないわけですが。
 で、ここまでくると言及するのもばからしくなってくるのですが、このコラムの最後の1、2行で、いきなり鳩山首相の「いのちを守る」政治が出てきます。笑いを取っているようにしか見えませんが、冗談を言っていい流れかどうか、よく考えてほしいものです。本気で書いているとしたら、この人はもうなにも考えなくていいですけど。


 それにしても冒頭の暴力オヤジの話ですが、「まず暴力で解決する」という発想の持ち主が警察官を務めていたことには慄然とします。末端の警察官もこうなら、警察官僚だった佐々淳行氏の著書もそうした思想に貫かれていて、こういう人たちがそろって、たとえば取り調べ可視化に猛反対しているのかと思うと、さらに寒気がしてきます。DVといえば「家族の絆を壊すDV防止法反対」を掲げる団体が、威嚇によって賛成派集会を妨害した事件がありましたが、これもぞっとする話です。反対派の意見を見ると、「家族の絆」と称するものが単なるDVと、引き離しに対するストーキング、つまり今回の事件とまったく同じ構図にしか見えません。さすがに産経新聞はこの反対運動には与していませんが、そのタテマエである「家族の絆」とやらを“真正保守”陣営がやたら持ち上げていることを考えると、きわどいところにいるような気もします。これは気がするだけですが。

記録的大雪は地球温暖化に疑問を - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1456400/

 ワシントンD.C.は観測史上最高の大雪だそうで、お見舞い申し上げます。
 ……見出しを読んで、古森義久氏は反語表現が好きだなあ、と思いつつ本文を見てみたら、マジでやんの。「地球温暖化」がどういう現象を指しているのかも知らずに、非難していたんですねえ。バンクーバーが積雪不足という映像はずいぶん報じられていると思うのですが、見てないんでしょうか。ああ、古森氏はテレビニュースを見ても、白いものは目に入らないんでしたっけ。
 古森ブログのプロフィールには「ワシントンから情報発信」とか書いてありますが、周囲10kmぐらいの範囲でしかものごとを判断できないから、全周4万kmの地球全体を見る視点もないことそのものは自覚してるんでしょうか。

冬季五輪開幕 日本選手団の朗報を待つ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/356640/

 というわけでいよいよバンクーバーですが、もちろん選手には全力を出し切ってほしいし、こういう形式で開催されているイベントですから国家単位の競争という視点が入ってくるのはやむを得ないし*1、産経が12日付「主張」で無神経に「ガンバレ日本」的なことを言うのは仕方ないよなあ、と思いながら読み始めたのですが、かなりの紙幅を割いてテロ対策の話をしているので驚きました。それも、誰も心配していないテロの可能性を案じた上で、北京五輪に比べて警備の人数が1/7ぐらいであることを挙げているので、アルカイダに狙ってほしいのか? とか思ってしまったわけですが。もしかしたら、北京では過剰警備だったと批判しているのかもしれませんが、どうしてもそういう意味には読めなくて困ってしまいます。カナダ軍がアフガニスタンに派兵しているから報復テロがあるかもしれない、というのも、産経は日本国自衛隊のアフガン派遣を主張しているわけで、これも日本に報復テロが起きてほしいようにしか思えませんし。

*1:チーム競技はともかく個人競技で、たとえばスケートで500m走って世界一速いのは誰かを決めるのに、なんで国単位で出場枠を決めたりまして国旗掲揚したり国別メダル数を比較する必要があるのか、と思うのですが。