黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、まぼろしを見る。他。

日中歴史共同研究 「南京虐殺」一致は問題だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/352430/

 1日付「主張」。「日本側の記述はおおむね客観的な資料に沿って書かれている」のに、南京事件の部分だけは「中国側の主張に引きずられて」いる、「まぼろし」論も載せるべきべき、なのだそうです。……あのね。「産経新聞」「正論」「SAPIO「WiLL」「撃論ムック」などの紙誌面はともかく、学会レベルの学術研究では、「南京大虐殺まぼろし」などという主張やそれを裏付ける資料などは、まったく扱われていないわけです。世界は広いもので、現在でも「地球は平面だ」「地球の周りを太陽が回っている」などと唱える人は存在しますが、世界天文年2009*1のリポートに、そんな説が載るでしょうか。まともな歴史研究の報告書に「まぼろし」説を載せるのは、天文研究に天動説を併記するのと同じことです。「南京虐殺」で認識が一致したといっても、共同研究に参加した学者間でのことだ」という表現は、あたかも他の「学者」なら「まぼろし」説を採用しているかのように思わせますが、そんな歴史学者はいません。
 産経「主張」の指摘を一般論に敷衍すると、かつての天動説がそうであったように、ある時点での学会の主流説が必ずしも事実を示すとは限らないのは確かです。ただ、「現在の歴史学会で『まぼろし』説が相手にされていないこと」は客観的な事実なので、そのへんと、学術研究の意味というものを、よーく考えていただきたいと願います。

北の砲撃 恫喝での要求は一蹴せよ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/352412/

 「制裁」一本槍の対北朝鮮外交が一蹴されることは、理解しいるようです。

産経抄】2月1日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/352411/

 野上彌生子の次男が13歳の1927年(昭和2年)に受験したエピソードの紹介から始まるんですが、なんで13歳なのかという疑問にとらわれてしまいました。「エッセイには数え年で書いてあったのをそのまま書いたんじゃ?」という指摘があったので調べてみましたが、次男(野上茂吉郎)は1913年の遅生まれで*2、1927年早春には満13歳だったようです(ただし卒業したのは旧制中等学校手はなく旧制七年制高等学校)。産経抄の中学受験ネタというと、2年前に江崎玲於奈氏についてわけのわからない記述をしていたことが思い出されますが*3、人を混乱させる記述はやめてほしいものです。調べるのにめちゃ時間がかかって、しかもなにもわからなかったじゃないか。orz

*1:http://www.astronomy2009.jp/ 。アニメ『マリー&ガリー』は公認イベントの一つでした。

*2:日本物理学会誌」19851005 p.40 に、1985年7月に没した時点で71歳との記述。CiNii - 野上茂吉郎先生を偲んで http://ci.nii.ac.jp/naid/110002075590/ 内にPDF あり。なお、小説家と大学教授の間に生まれた茂吉郎はそのまま旧制東京高等学校から東京帝大に進み東大教授になっているので、学業は優秀で進学に特段の障害もなかったと思われます。

*3: d:id:pr3:20080107:1199680046 参照。