産経、やっぱり新年から産経。
時の経つのは早いもので、1年まとめのご挨拶をしたのがつい昨日のことなのに、もう新年のご挨拶をする時期になりました。今年もよろしくお願いいたします。では元日らしく爽やかに、元旦の産経論説を見ていきましょう。
「国難」への気構えを共有したい - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/341528/
というわけで新保祐司氏の1日付「正論」ですが、ちっとも爽やかじゃねえ(笑)。ツカミが吉田松陰生誕180年はまだいいとして、そこからいきなり生臭い(というかある意味で青臭い)現政権批判から始まっていますが、もうちょっと、年頭らしく格調高くはできないのでしょうか。あとは、NHKドラマで存在を思い出したらしい『坂の上の雲』と日露戦争論で、産経文化人は(司馬好きはともかく)なんでNHKドラマが大好きなんでしょうかねえ。さすがに「NHKは反日」と叫んでいる系列テレビ局 主張が親和的なCSテレビ局に出演しているような人たちとは多少層が違う、とは思いますが。
なんだか「祖国」という概念を言いたいらしいのですが、その中で「祖国防衛戦争を描いた名作」としてトルストイ『戦争と平和』と対比しているのは、意識的なのかただの大ボケなのか、本気でわかりかねます。戦争を描いた名作*1といえば『戦争と平和』ですから『坂の上の雲』と対比されるのはわかりますが、それがナポレオンの侵略に対する祖国防衛を帝政ロシア側の視点から描いたものだということは、承知しているのでしょうか。「祖国」というのは単に「生まれた国」ぐらいの意味で、それが帰属すべき対象という価値観の人もいれば、単に「生まれた国」以上の意味を持たず「住んでいる国」とは別概念の人もいます(同じ国に住み続けていたとしても)。
まあ、ある意味で非常に、新年最初の産経新聞「正論」欄らしい一文でした。
【年のはじめに】論説委員長・中静敬一郎 「国思う心」が難局を動かす - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100101/plc1001010226001-n1.htm
「主張(社説)」が見あたらないし年頭社説は論説委員長や主筆が書くのが各新聞社とも慣例なので、これが1日付の社説に相当するのだと思います。
冒頭がいきなり「「愛国」という言葉が使われなくなってから、久しい。」という、これも実に産経らしい年頭社説です。「愛国」という言葉自体は、ずいぶんよく目にするんですけどね。自民党文教族(森喜朗、安倍晋三、中山成彬、下村博文、山谷えり子、稲田朋美、義家弘介といった各氏)や日本会議、つくる会/日本教育再生機構、家族会/巣食う会/拉致議連、国家基本問題研究所、拓殖大学大学院の一部教授陣、日本文化チャンネル桜、維新政党・新風と元関係者(新風連)、さらにそのお友達の「行動する保守」の皆さん、まとめて「真正保守」または「産経に近い人々」から*2。ああ、いわゆる街宣右翼もよく使ってますね。
今の日本は危機的状況だという指摘から、それは現政権が悪い、という流れは産経「主張」の王道を行くもので、もしかしたら「主張」はほとんど中静委員長が書いているのではないか、という疑念もおぼえたのですが、論説委員のほとんどがカーボンコピーのような思考を持っているだけでしょうね。選挙で民主党を選んだ国民が悪い、とか、イスラエル政府のポスターを三浦朱門氏経由で引用したりとか、白村江の戦いの故事から自分を犠牲にして「愛国」を貫いた人物を賞賛したりとか、もちろん最後は、鳩山首相はそれを見習え、という締め方です。
今夜の初夢は、おなかいっぱいに詰め込まれた産経論説のせいで、悪夢になってしまいそうです。