黙然日記(廃墟)

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産経記者がキショい。他。

【くにのあとさき】東京特派員・湯浅博 不戦共同体は「天使」のものか - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/091116/asi0911160258000-n1.htm

 16日付。鳩山由紀夫首相とバラク・オバマ大統領は、理想主義者という点で似通っているように思います。その意味では、新自由主義タカ派で意気投合したヤン・ヤスや小泉・ブッシュの時代と似通ったところがあります。今回はまるでベクトルが逆ですが、人気の高い指導者がお互いを認め合う関係になるならば、日米の良好な関係構築について、しばらく心配する必要はないだろうと思います。それはともかく、理想主義者に対して(広い意味での)保守派は、現実主義を持ち出して批判することが多いようです。しかし、そのへんの学生や自宅義勇兵ならともかく、百戦錬磨で一国の指導者の地位に就いた政治家が、本当に現実をまったく無視して理想論だけをむやみに唱えているだけで、スローガンとしての理想を掲げつつも現実にもたらす影響を見極めてようとしていない*1、ということが、それこそ現実的にあり得るでしょうか。
 湯浅特派員の言うことをわたしなりに要約すると、A国とB国の間に不戦条約が成立するのは、自分が攻め込めなくなるデメリットよりも相手が攻めてこなくなるメリットの方が大きく、それがお互いに成立する場合であり、決して天使のような理想主義で片づくものではない、というものでしょう。これはよくわかる話です。そしてこのメリットは、現在すべての主権国家間で成立すると、わたしは考えています。湯浅氏は1928年パリ不戦条約とその破綻を例に引いていますが、植民地主義華やかなりしころ、あるいは少なくとも「植民地確保は自国の生命線」と公言するような国がある状況ならともかく、現代においてはどの国にとっても、他国に攻め入ることは決して得策ではありません。念のため、ロシアにとってのチェチェン、中国にとっての台湾などは、その国の主張としては「自国領」であって、主権国家間の条約では防げません*2。さらに言えば、「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれ(戦争)を放棄する」という最高法規があったとしても、防止できないタイプの戦争です。
 ところが湯浅氏は、このあと、いくら政権交代があろうと、日米間の条約はもちろん協定、覚書、合意にいたるまで、覆すことはまかりならん、と唱えています。もちろん条約その他の国際的な約束は、政権交代どころか、帝政から共和制といった政体そのものの変化があってさえ、ほぼ自動的に引き継がれるようです(北方領土問題では、江戸幕府ロシア帝国が結んだ日露和親条約にまでさかのぼって議論されることがよくあります)。しかし、国際間の約束事というのは、絶対に破棄できないものなのでしょうか。国際法について詳しくはありませんが、一方の国が条約その他を破棄する意志を示し、もう一方がそれに合意すれば、条約その他は破棄できるものではないのでしょうか。日米安保条約金科玉条や不磨の大典ではありません。まして単なる合意や密約について、マニフェストに示した上で選挙を通して成立した政権が破棄の意志を表明することに、なにか不都合はあるんでしょうか。もちろんそれが破棄できるかは、相手国とのあらたな合意が必要になるわけですが。条約その他に関する湯浅特派員の認識が、どうもよくわかりません。

オバマ演説 日米基軸こそ「安定の要」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/324634/

 15日付「主張」なわけですが、ほぼベタ褒めですね。「宗主国の大統領閣下が日米同盟は基軸だとおっしゃっておられるのだ!」てな感じで、その他の演説内容についても手放しの褒めようです。はて、産経はオバマ政権をなにかと批判していたような気がするんですが。
 
 その批判の筆頭格である記者がいたなあ、と思い出して古森義久氏のブログを見てみたら、とりあえず大統領訪日に関してこんなエントリを書いていました(13日付。大統領演説の内容に言及したエントリは、現時点ではありません)。タイトルを見たときは、ああやはり古森氏はオバマ大統領を批判してるんだなあ(斜めの方向からだけど)、と思ったわけですが。

オバマ大統領が大好きなのはゴルフと外国訪問 - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1319197/
とはいえ、とにかく日本にきてくれるのは大いに結構、熱い歓迎の意を表したいところです。しかし滞日の時間は当初より短縮されて、一日足らず、その一方、中国の滞在は延べ4日にも及びそうです。
 
だが、とにもかくにも、わが同盟国の大統領の来日です。
歓迎したいですね。

 うーわっ。「マジキショ」と思ってしまいましたが、みなさんはどうでしょうか。

鳩山首相発言 日米の信頼壊すつもりか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/325188/
 米軍の抑止力と沖縄の負担の問題を総合的に判断するのは、国の責任だ。地方選の結果を待つような姿勢は、最高責任者としての見識を問われる。

 キショいのは別に古森氏だけではないわけで、17日付「主張」のこれもかなりうんざりするような内容です。「地元の負担」のうち、心理的な負担感がどれだけなのか、見極めてからでなければ拙速な判断になるしかないのですが。

*1:努力はしていても実際には見極めるところまで行っていない、という可能性は、残念ながら大いにあり得ますが。

*2:北朝鮮にとっての韓国」の場合は、自国領だと主張していますが、お互いの国連加盟も認めているわけで、主権国家と認めてはいると考えていいのかもしれません。