黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経、阿呆陀羅経を唱える。他。

普天間移設 首相は勇気ある決断せよ 国益損なう日米同盟空洞化 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/321095/

 6日付「主張」はまたもや、「日米同盟教」のありがたい御経文です。もう読むのも面倒になってきましたが、ふと、他紙がこの問題についてどんな意見表明をしているのか、産経が大騒ぎするほど一般的に問題視されているのかが気になってきました(一紙をウォッチしていると、他紙を見る余裕があまりなくなってくるのです)。そこで新s(朝日・日経・読売各紙)と毎日jpの社説ページを開いてみたのですが*1、見出しを眺めるかぎり、この1週間で普天間問題とか日米同盟とか言っているのは、11月1日付・3日付のいずれも日経社説の2本だけでした。一方で産経の社説(「主張)は、日米関係をメインにしたものが1週間で3本もあり、さらに今日の分は2本分のスペースを使った1本ですから、実質4本と考えることができます。1週間のうち4紙で2本、平均0.5本となり、産経はその8倍にも達するわけです(これはあまり意味のない数字ですが、単に第2位の日経と比べても2倍です)。
 この1週間、各紙が共通して扱うような大きな話題(たとえば来週のオバマ米大統領訪日はおそらく各紙とも取り上げるでしょう)はあまりなかったものの、内政面での国会関連や行政改革、環境問題の扱いも軽く、経済問題にはまったく触れられず、産経が以前から熱心に取り上げてきた原発プルサーマル開始や指導力不足教員の統計発表なども、他紙は取り上げているのにスルーしています。わかっていたつもりですが、改めて比較してみて、実に異様な感じを受けました。*2

asahi.com朝日新聞社):中学歴史教科書シェア、「つくる会」系じわり増 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/1105/TKY200911050507.html

 2010年度の教科書採択のうち中学歴史で、歴史修正主義に基づいた教科書の採択が21269冊、約1.6%*3にものぼったというニュースです。たいへん憂うべき状況ですが、その内訳を見てみましょう。歴史修正主義教科書は2001年に「つくる会」が編纂、扶桑社を版元に発行したのが最初です。このとき産経新聞は全面的にバックアップし、いったん版元を引き受けたものの新聞社としての中立性が問題視されたのを受けて、関連会社の扶桑社*4に版元を移したという経緯があります。しかしそこに2006年のつくる会分裂騒動があり、今回の採択から(ほぼ同内容の教科書が)2冊発売されるという異常事態になっています。1冊は、つくる会から分裂した教科書改善の会が編纂し、引き続き扶桑社から発売される版、もう1冊はつくる会に残ったメンバーが独立系出版社の自由社から発売する版です。
 そして今回の採択の結果は、自由社版教科書が14019冊、扶桑社版が7450冊。ほぼダブルスコアの結果でした。とりあえず扶桑社と産経新聞に対しては、「ねえどんな気持ち? 今どんな気持ち?(AA略)」といったところですが。なお、朝日新聞の記事を引用しましたが、現時点でこのニュースは産経新聞電子版では報じられていません。

*1:新s http://allatanys.jp/A003/index.html 毎日 http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/

*2:見出しの「阿呆陀羅経」について補足しておくと、江戸時代末期に流行した、お経に似せて時事の話題などを唱え金銭を乞うものだそうです。 http://misemono.net/library/hisdic/ahodara.html など参照。もっとも近代になると、「有難そうなのに実はそうではない、やたらに長い詠唱」という意味でも使われている、と思います。見出しはこちらの意味でつけました、といちおう断っておきます。

*3:読売の記事では「1.7%」となっています。http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20091106-OYT8T00243.htm

*4:正確には、当時産経新聞社の親会社だったフジテレビの子会社が扶桑社、つまり兄弟会社の関係。なお、2012年度より教科書出版事業は扶桑社の子会社である育鵬社に移管の予定。