黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、本性を顕す。

ブロッガーの逮捕が増えてきた - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1296365/

 前のエントリ*1で、古森義久氏のブログがおかしなことになっていると紹介したのですが、なにやら歯止めのきかない暴走状態に陥ってしまっているようです。
 ネット上での発言が、その国の法規に明確に違反していれば逮捕の対象になることを、古森氏はいままで知らなかったようです。これが日本国の場合、威力業務妨害という明らかな犯罪行為に対して逮捕・刑事処罰された例は数多くあります。なお、「威力業務妨害」は単なる業務妨害ではなく、暴力的な手段を用いた場合のことです。また、名誉毀損という重大な人権侵害に対して刑事判断が下った例もあります(が、たいていは民事の名誉毀損裁判になります)。こうした逮捕・刑事罰が認められるのは、言論が他者の人権を侵したときに、言論の自由というもう一つの人権との兼ね合いを考慮した上で、なお看過できないという通念があるからです。言論の自由がどこまで認められるかは常に論議がありますが、これは基本的人権の一つであり、「公共の福祉」*2に反するぎりぎりのところまでは認められると解釈するべきものです。
 批判は不愉快でしょう。明らかな威力業務妨害偽計業務妨害や、刑事民事を問わず名誉毀損に対しては、自らの権利を守るために立ち向かう必要はあるでしょう。しかしそれを国家権力に委ね、言論弾圧の道具として認めることは、少なくとも自由主義・民主主義を標榜する姿勢とはまったく矛盾するものです。
 全世界で活字・放送ジャーナリストとネットジャーナリストを合わせて125人が逮捕・拘束されており、うち56人がネットジャーナリスト(ブロガーを含む)であるというCPJ(ジャーナリスト保護委員会)の調査を引用した自称ジャーナリストの古森義久*3は、この事実を、ジャーナリストの保護のためではなく、ブロガーの逮捕は珍しくないという文脈で引用しています。一人のブロガーの、名誉毀損かもしれないゲンドウに立腹したというだけの理由で、ブロガーが逮捕さてざまを見ろとでも言いたいのでしょうか。
 このエントリも含めて、古森氏が中国のネット言論弾圧を批判するのは、ネット言論の価値を認めているからではなく、単に中国政府を攻撃する材料としか考えていない、ということでしょうか。言論人として、あまりにも、あまりにも情けない姿勢だと指摘せざるを得ません。一歩も二歩も譲って、ネット言論の価値を認めろとは言わないとしても、「ジャーナリストを名乗る人々が言論を理由に国家権力によって弾圧されている事実」に対して、まったく危機感を持っていないのでしょうか。
 ついでながら、コメント欄で、「産経やイザや古森への言論妨害は組織的かもしれませんね。」と述べていることに、あらためて不安を抱きます。少なくとも、3年ほど前から個人で(身を守るための匿名で)、産経や古森氏を批判し続けているブロガーがここにいます。そのきっかけも、古森氏がJIIAの言論を弾圧したというスティーブン・クレモンス氏の批判がきっかけでした。古森氏への批判はずっと続いていて、それがたまたま現在増えているだけでしょう。かつての信奉者が次々に離反して、本人はそれを合理的に認めることができず陰謀論で片づけるというのは、もはや末期状態ではないでしょうか。これは本当に、心配して申し上げることです。

*1: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20091027/1256656309

*2:日本国憲法第12条。なお、この「公共のう福祉」は「国家の利益」ではなく、お互いに他者の人権を侵害しないことを意味するのが通説です。Wikipedia:公共の福祉も参照。

*3:この表現を使うと本人が激怒することは承知していますが、ここではこのように表現する以外ありません。