黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、誤解を広める。他。

【正論】対米政策の「説得性」どう担保 東洋学園大学准教授・櫻田淳 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/301997/

 昨日のエントリ*1であんなことを書いたら、本当に櫻田氏が登場してしまいました。変な意味でなく内容に期待していたのですが、ううん。国家を豪華客船にたとえて、客室サービス(内政)よりも航海術(外交)が大切だ、氷山にぶつかったらサービスもなにもない、と言っていますが、これをホテル経営にたとえるとどうなるでしょう。ホテルが氷山にぶつかる確率は天文学的な数字です*2。「正論」執筆陣の中では読ませる文章を書く人なのですが、ときどきこういう脇が甘すぎる比喩を使うのがねえ。ブッシュ−小泉時代の「蜜月」関係を最良のものとする対米観は、論ずるに値しません。それはそれで結構なものであったとしても、二つの独立国がお互いに政権交代を経ているのですから。たとえ親子関係であっても、9年もあれば親の知らない交友関係を作るぐらいの時間はあります。

【主張】自民党総裁選 再生目指し谷垣氏に続け - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/301962/

 おもしろくなってきた自民党総裁選ですが、産経「主張」が輪をかけておもしろくしてくれています。現在の宏池会でリーダー格である谷垣禎一氏が立候補にあたって、「保守本流」の立場から保守政党としての出直しを宣言したのに対して、「真正保守」の立場をとる産経は、二つの「保守」の意味をうまくすり替えながら、「真正保守」の象徴である憲法改正・教育改革を強要しています。このあたり、お笑い新聞の本領発揮ですね。そしてしつこく、「真正保守」の若手である稲田朋美氏を言外に推しているあたりも素敵です。これで総裁選に候補者を立てられなかったら、安倍派が離党して平沼グループの新会派に合流するようなことも勝手に期待しておきましょう。*3

[net]ついでに。

 Wikipedia:保守本流とkeyword:真正保守あたりを比較してみてほしいのですが、両者は言葉としては似ていても、実態としてはまったく別の、ほとんど正反対といっていいような概念を指します。後から出てきて「真正」を名乗るのは饅頭屋の元祖と本家の争いみたいなものなのですが、ネット上の自称保守派で、あきらかに「真正保守」の立場なのに、自分たちが(自分のあがめる教組様こそ)「保守本流」なり、と名乗りたがる人が多くて困ります。大半は言葉の意味を知らずに語感だけで言っているだけなのでしょうが、そうして誤解が広がるのも困ったものだし、上記産経社説のように意図的に「保守」という言葉を混同させて使い、誤解を広めるマスメディアがあることは、もっと困りますね。

*1: d:id:pr3:20090914:1252940889

*2:ホテル経営の実際はよく知りませんが、いくつかの実例から考えて、リスクへの対応としてはおそらく、火災対策が最重要なのでしょうね。たいていは放火ではなく内部からの失火が原因です。

*3:念のため、わたしがここでなにか予測すると圧倒的な確率で裏目に出るので(笑)、あまり期待しないでください。