黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、総裁候補を推す。他。

【主張】自民党総裁選 強い指導者選びに全力を - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/299956/

 いやぁ、ちょっとこれ。普通に読めば、いままでの自民党のあり方を反省して立党の精神に立ち返り、明確なビジョンをもつ指導者を総裁にしよう、当選回数にこだわらずに若返りを図るのもいい、という、わりと抽象的な論です。もちろんそこは産経ですから、言外に“真正保守”(あるいは極右)の総裁を求めていることは、誰にでもわかると思います。
 さて、総裁候補としていろいろな議員が取りざたされていますが、その中に稲田朋美氏を推す声があります*1。実はいろいろ検討してみると、まったく根拠のない話でもありません。今回総選挙で小選挙区当選した衆院議員を有資格者とする声が強いのですが、まずこれだけでかなり人数が絞られます(笑)。その中で“真正保守”の立場をとる議員となるとさらに絞られ、あるていど若くて一定の知名度がある人では、安倍晋三氏と稲田氏ぐらいしか残りません。それだけ“真正保守”議員が落ちまくったということですが(笑)、いくら安倍氏が復活を目指しているとしても、このタイミングで自民党惨敗の責任者の一人を総裁にすることはあり得ません。とすると、“真正保守”が推薦できる総裁候補は、稲田氏しかいなくなるのです。女性であるという点も、もちろんイメージ刷新の面で有利に働きます。小池百合子氏や高市早苗氏が小選挙区当選していたら、そちらが優先されたでしょうが。
 この前提でもう一度、上記「主張」を読み返してみると、あらまあ大変。稲田氏をプッシュしているようにしか読めません両院議員総会での、誰かの発言として引用されている「立党の精神に立ち返り保守とは何かを再構築すべきだ」も、稲田氏が最近口癖のように言っているものです。というか実は、やはり稲田氏の発言でした*2
 ところで、自民党立党の精神に立ち返るというのは、綱領や立党宣言の内容に戻るということになりますが、先日とらとらさんの指摘として紹介したように*3、これらは産経や稲田氏の主張とはおよそ懸け離れた内容です。「稲田総裁」を推して見せかけだけのリフレッシュを目指す動きがどうなるのか、この自民党総裁選挙を見つめていこうと思います。

【正論】自民が再び政権を担うには… 学習院大学教授・井上寿一 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/299765/

 そんなわけで産経オピニオンは、今は「自民党の再生」に注意が向いているようです。「正論」欄もこれなのですが、これはあまりに凄い自民党がしっかりしないと二大政党制が機能しない、というのは、とりあえずしばらくの間はそのとおりでしょう。300議席という圧勝を「してしまった」民主党に対して、連立相手の社民党国民新党、建設的野党を宣言した共産党には、もちろん監視とブレーキの役割を果たしてもらわないと困るのですが、第二勢力となった自民・公明の役割も重要です。しかしその次に、「自民党が議会における政策論争で優位な立場に立ち、つぎの選挙に勝たなくてはならない」。これが「日本の民主主義が発展するため」だと井上氏は言うのです。いったいこの人が考える「民主主義」というのは、どういうものなのでしょうか。ていうか、なんなのでしょうか。
 それ以外もなんとも乱暴な論考で、「かつて日本にも複数政党制の時代があった」とか、言葉の定義をまったく理解していないのが明白です。これで大学教授であり法学博士であり、プロフィールに「研究テーマ:近現代日本政治外交史*4と書いているのですから、日本の学界における知的レベルの衰退は憂うべきものがあります。
 あとは戦前の政友会と対比して、第1に従米、第2に景気対策(しかも、世界恐慌を受けて景気策に走ったことが成功したのは見習え、その次の選挙でも景気にこだわって失敗したことは反面教師にしろ、です)、3番目には大連立を目指せ的なことを言っているのですが、話になりません。野党側から大連立を持ちかけろというのは、たぶんまだ頭の切り替えができていないのだろうと思いますが。

自民党「再生会議」が初会合 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/300076/

 そんなわけで産経には自民党広報紙らしい記事も載っていますが、ほんっっっとに教育再生会議の失敗からなにも学んでいないネーミングだなと。