黙然日記(廃墟)

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産経抄の敷居観。他。

産経抄】9月6日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/298683/

 朝刊コラムを18時49分に平然と配信してくる産経イザ!です。翌日になってから日付を捏造して配信してくることも珍しくないので*1、今日はまだマシな方ですが。
 内容ですが、慣用句の誤用から話を切り出しているので、ああいつもの復古主義か、と思っていると、いきなり言葉の誤用が発生するのはバリアフリーのせいと地下水脈でつながってしまいます。単に、玄関の扉が和風の引き戸ではなく洋風のドアにする家が増えているだけでしょうし(ドアでもたいていは隙間を埋めるためのわずかな段差があって、そこを「敷居」とわたしは呼んでいるんですが、おかしいでしょうか?)、本来の意味の敷居がある引き戸でも、段差のないバリアフリーにはできます*2。ここまででまだ半分か。
 これに続いて、「他人に対し、やってはいけないことをしても、痛みに感じないのでは、この表現は空洞化するだけである」とか書いているんですが、なるほどそうですか。沖縄米兵強姦事件の被害者の家は、産経新聞にとってどれほど「敷居が高い」のでしょうね。
 さらにここからいきなり政治の話に飛び、現閣僚の国際会議キャンセルを批判しているのはともかく、民主党の掲げる米軍基地移転見直しを不義理だと非難して締めています。政権交代で下野した今も、「あめぽちの」という産経の枕詞を返上するつもりはないようです。
 最近はヒット率が下がっていることもあって、「産経抄」を単独で取り上げることは少なかったのですが、いざツッコミを始めるとあいかわらずネタの宝庫ですねえ。

【都市伝説を追う】アキバの麻生人気は都市伝説? 自民大敗で検証してみた - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/298578/

 このシリーズは以前も取り上げましたが*3、担当者の個性なのか*4、ちゃんと取材をして自民党も批判する産経新聞らしくない連載になっていますね。「地域限定の人気者を全国で行われる選挙の顔にしようとした」という、言われてみれば誰でもおかしいと思う点の指摘や、「『ローゼンメイデン』を読んでいた」という目撃談がいまだに裏のとれていない真偽不明な都市伝説であると明記している点など*5、少し前ならあり得なかったような記述が並びます。
 記事全体としては、現時点でのルポとしては面白いのですが、都市伝説と冠するからには「なぜそうなったのか」「1年前の人気はどこまで本物だったのか」というあたりを追求してほしかったところです。まだそこまでは踏み込めないのかもしれませんが。あと、少なくともネット上のおたくの間で(秋葉原の路上でインタビューしまくるわけにもいかないので)自民党と麻生氏の人気が急落したのは、今年6月あたりからだったと認識しています。

【軍事情勢】88歳「終わらないラブレター」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/298564/

 冒頭いきなり、各国の歴史には明部と暗部があって、と大上段に振りかぶってくるので、こちらも何事かと身構えてしまいます。まあ例によって“自虐史観”批判なのですが、戦時下の日本にも明るい話はあったのに、自虐史観教科書では特に敗戦直前の時期を暗部ばかり強調して教えている、というのです。うーん。わたしも中学高校を卒業して相当経つので細かいことは覚えていませんが、当時の出来事で、教科書に載せるような内容で明るい話ってありましたっけ。「すでに敗北が確定的でどうしようもない状況で、いっそ明るいほどの虚無感があった」というような状況なら、つい最近、産経記者の多くが体験していたのではないかと思いますが。
 わりと長いコラムなのですが、ここまでは本の導入部の文章で、残りの大半は他人の本の引き写しです。戦時下の感動実話みたいなつもりらしいですが、導入部とテーマがつながっていません。また、この話を前向きな明るい雰囲気にしているのはひとえに彼女の性格(と、おそらくは歳月を重ねた感情の変化)によるもので、同じ状況で夫を死なせた国家と軍対を恨み続ける人がいても、ちっともおかしくありません。「こういう人生があった」というだけの記録で(もちろん、尊敬すべき人生の貴重な記録ですが)、なんでこれを自虐史観攻撃の材料にできると思ったのか、野口裕之記者は本当に不思議な人です。

*1:こういう事故は土日に多い、というかたいてい土日です。担当者の配置とかにもよるんでしょうが、なぜ同じことを繰り返すんでしょうね。

*2:日本の家屋の場合、玄関の敷居から続く三和土と、履き物を脱いで上がる床とのあいだに段差を作ることになるので、敷居だけバリアフリーにしてもしかたないんですが。

*3: d:id:pr3:20090711:1247324332 、この回の担当者は行場竹彦記者。

*4:今回の担当者は磨井慎吾記者。

*5:しばらく前までは、ネット上でもこれを指摘すると猛烈な攻撃を受けたものでした。そういう意味では、“ローゼン閣下”人気はたしかに存在したと思います。