黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、藁人形を極める。他。

【主張】小沢幹事長 統治責任を共有している - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/298272/

 小沢一郎・次期民主党幹事長*1は、幹事長として党務に専念し、政策にも組閣にも関わらない、と明言しているわけです。かつて『日本改造計画』をぶち上げたころと違って、少なくともここ数年の小沢氏の関心はその大半が選挙で占められており、すこしだけ政局(大連立とか)にも関心はあるのかな、といったあたりになっているようにしか見えません。すべての政治家がそれでは困りますが、選挙のスペシャリストである政治家がいることは問題ないと思います。幹事長は一般に選挙対策の責任者であり、「筆頭代表代行(選挙担当)」よりはわかりやすい肩書きでしょう。
 ところが産経は、幹事長は法案成立にも関わる役職のはずで、積極的に関わるべきだと提言します。そして提言した上で、「政権運営に事実上、2つの「司令塔」が生まれることを意味する」と危惧を表明しているのです。藁人形叩きもここに極まれりですね。
 長年続いた自民党政権はたしかに、党役員が内閣に口を出したりその逆があったり、総理大臣と総裁(党代表)の分離すら、(今回の首班指名も含めて)最後までできませんでした。それはそういう方針の政党だからしかたないといえばしかたないのですが、共産党一党独裁国家の体制に限りなく似ていますね。というのはともかく、それと別のやり方を目指す政権が生まれたことを、これだけ明言されても、産経はいまだに理解できていないようです。産経が崇拝してやまない米国でも(議院内閣制ではないので単純に比較はできませんが)、議会の政権与党幹部がホワイトハウスに口を出すような仕組みにはなっていないと思います。
 最終段落の「西松事件での〕小沢氏の説明責任は不十分なまま」とか、もはや日本語にもなってないし。「説明は不十分」か「説明責任は果たされていない」か、どちらかを言いたかったのでしょうが、「説明責任」という単語を機械的に使い続けたために、わけがわからなくなってしまっているのでしょうね。

【政治部遊軍・高橋昌之のとっておき】自民党再生への提言(上)首相指名の前に総裁選出を (1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090905/stt0909050831006-n1.htm
【政治部遊軍・高橋昌之のとっておき】自民党再生への提言(下)健全な保守政党に (1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090905/stt0909050832007-n1.htm

 産経新聞政治部遊軍記者といえば、外務省担当を(一人で)兼任している阿比留瑠比記者が有名ですが、タイトルに名前入りのコラムを連載している*2高橋記者も忘れてはいけません。お笑いの面で。過去にもいろいろ面白いことを書いているので、興味ある方はMSN産経内でぐぐってみてください。
 高橋記者の提案はいくつかありますが、(上)では見出しのとおりですが、やはりこの人も上で指摘したように、総・総分離といった概念をよく理解できていないようです。
 本題は(下)の方です(話題としては(上)の3ページ目から続いています)。第一に集団的自衛権、第二に歴史認識、第三に教育問題だそうです。いずれも「真の保守政党」として保守層の支持を取り戻すとしていますが、それは期待される「保守政党」の姿ではありません。今回の敗因は自民党の固定支持層が離れたことだという分析はおそらく正しいでしょうが、彼らは言葉本来の意味で「保守」ではあっても、決して「真の保守」など望んでいません。生活を楽にしてくれる政治を望んでいたのであり、かつての自民党はそれを実現してきたから支持されていたのです。その旧来型の政治が続くことが本来の「保守」であることが、これは一般にも、あまり理解されていないような気がします。
 そのあとに高橋記者が提案しているのは、候補者公募制の本格導入と政権交代可能な二大政党の位置を保持することで、これは一見正しいようですが、公募で国士様を集めるつもりかなあとか、野党として出した法案を民主党に飲ませることはできるはずとか(こないだまで産経はそういうのを全否定していませんでしたか)、まことにツッコミどころの多い文章です。
 高橋記者の考える「保守」とは「産経的保守」、自称「真性保守」、あからさまにいえば単なる「右翼」であって、本来の意味の「保守」とはかけ離れた存在です。これは高橋記者に限らず、たとえば“靖国参拝で勝つる!”の乾正人政治部長など、多くの産経記者が、この区別をわかっていない、あるいは「保守」の概念をひたすら自分に都合のいいように解釈し続けたままだったようです。そして、なすすべもなく(あるわけないでしょう)産経初めての下野を迎えてしまったわけです。

【金曜討論】夫婦別姓 八木秀次氏、青野慶久氏 (1/4ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/090904/sty0909040753001-n1.htm

 タイトルのとおり金曜日の記事なのですが、あまりに面白かったので。おなじみ八木ちゃんと、旧姓使用を通しているサイボウズの青野社長それぞれへのインタビュー記事です。青野氏が実際に通称使用でどれだけ理不尽な困難を被っているかを述べているのに対して(結婚時に姓が変わったというだけのために、株式の名義変更で数百万円の手数料を強いられたそうです)、八木ちゃんはひたすら「家族を解体する陰謀だ」的な抽象論に終始しています。この説得力の違いは一見の価値ありですよ。ていうかそんなに家族の価値が大事なら、「離婚を禁止せよ」とでも主張してみたらどうですか? 

*1:この時期の肩書きは難しいですね……。

*2:電子版だけだったかもしれません。