黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、従米を超える。他。

【正論】吉田ドクトリンに代わるもの 日本国際フォーラム理事長・伊藤憲一 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/278573/

 筆者の伊藤氏は基本的に冷戦思考から抜け出せていないと思われます。東側の「共産主義」に対する西側を「民主主義圏」としているあたりに、勘違いが透けて見えます。たしかに、かつてのソ連や今の中国にまともな民主主義があった/あるとは言えません。政党選択の自由という一点に限ってもそれは明白で、国民の意思で政権政党を選択できることこそが民主主義の根幹なのですがそれはさておき、「非民主主義」対「民主主義」ならわかります。また、「共産主義」は経済システムに関する用語なので、対置するとしたら「資本主義圏」になりますし、あるいは双方を含めて「社会主義圏」対「自由主義圏」でなければなりません。
 同じように冷戦思考の残滓として、社会主義圏のワルシャワ条約機構や中ソ同盟(これはあっというまに崩壊したんですが)に対抗する北大西洋条約機構日米安保条約があった、つまり受け身であったとしながら、そうした西側の軍事同盟体制が、冷戦後の世界を支配した
 結論としては、平和憲法軽武装日米安保体制の吉田ドクトリンを超えるポスト・ポスト冷戦時代の新たなドクトリンになるのは、日本が自主的・積極的に国際軍事貢献に取り組むことだ、といういつものような話になっています。ただ、日米安保条約と無関係に、米国の指示だからやるのではない、とまで踏み込んでいるところが、多少は目新しいでしょうか。この結論は、一見すると従米の逆とも思えるかもしれません。しかし、日本国が自由主義圏の中心的な一部であることを「この天与の事実」と表現してしまう伊藤氏の能天気は、文字どおりの米国崇拝・日米同盟信仰を吐露しています*1。「天与」という表現は筆が滑ったのだ、と言い訳するにしても、「言い間違いには無意識の願望が現れる」というのは、精神分析の初歩ですね*2

【主張】農水ヤミ専従 異常癒着ほかにないのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/278513/ ウェブ魚拓

 *3この、農水省社保庁ヤミ専従問題については、産経は非常に熱心ですよね。官僚による税金の無駄遣いや目に余る行動は、他にいくらでもあると思うのですが。

農水省幹部が生産者団体の大会中止を要請 民主議員の招待を理由に - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/econpolicy/277887/

 これもとんでもない事件なんですが、あまり熱心に報道する気はないようですね。見出しでは「民主議員招待を理由に」となっていますが、本文を読むと、自民党議員が圧力をかけたということがはっきりしています。追求しないんでしょうか。ついでながら、その「本文」を見ると同じ文章が2回繰り返されています。記念に魚拓を取っておきました。

*1:その前の、自由主義圏が冷戦に勝利したことを「天与」と表現している可能性もありますが、文脈からは日本国の属する状況を指しているとしか読めません。

*2:たとえば、「亡くなったミヤモトさん」と言うべきときに「ミヤケさん」と言い間違えるのは、身近にいるミヤケ氏が死ねばいいのに、と思う内心の現れだ、という説。科学的な正確性は疑問ですし、どう考えても当てはまらない例はたくさんありますし、なにより、生かじりの精神分析を日常会話に持ち出すやつはたいへん嫌われるのですが。。

*3:この農水省ネタは via 産経抄スレ