黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論」の示す教育の意味。

【正論】世界が注目する日本の寺子屋 筑波大学名誉教授・村上和雄 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/278064/

 村上和雄氏といえば「サムシング・グレート」ですが、今回はその点ではおとなしめです。しかしきっちり、「〔遺伝子暗号解読にたずさわって〕ヒトの遺伝情報には多くの使われない部分があることを知った。これらの部分のスイッチをオンにするのが教育の力であると思っている」と、とても遺伝子生物学の権威とは思えないようなことを述べておられます。これなら以前に「正論」欄で書いていた、「愛は遺伝子を活性化させる」*1の方がまだまともです。
 「正論」欄にはよくあることですが、見出しから想像される内容とまったく違います。江戸時代の寺子屋は話のマクラ程度で、公文式教育と、日本ユネスコ協会連盟による「世界寺子屋運動」の宣伝です。だったら見出しは、「世界が注目する日本の寺子屋運動」でいいでしょうに。
 ざっとぐぐった範囲では、村上氏が協会連盟や各地の協会に直接関わっているというわけでもないようです。日本ユネスコ協会連盟*2は日本各地にあるユネスコ協会のまとめ役で、ユネスコ協会は国連ユネスコ(UNESCO)に協力する民間団体です。……どっかで以前書いたような解説なわけですが、そういう団体が本来の目的を果たすことは、肯定的に評価します。
 ええと。国連ユニセフとは別の組織である日本ユニセフ協会について、このブログでは批判ばかりする結果になっていますが、その本来の役割である、協会が積極的に(かつ、一部は怪しげな手法で)集めた寄付金(から経費を除いた額)を使い、世界各地の子供たちへの救援活動を実際に行っていることには、尊敬の意を払っているつもりです。以前も別のことで紹介しましたが、「やらぬ善よりやる偽善」という言葉もあります。それ以外の“活動”に問題がある、というだけです。そういう意味で、ユネスコ協会の世界寺子屋運動も、本来の目的に沿った価値のある運動だろうと思います。
 だからまあ、全体的にはあまり文句はないのですが、なんかもにょもにょするのはなぜかなあ。あまりに宣伝臭が強いからでしょうか。結語的に村上氏は、「世界平和は「自分の頭で考える」広範な市民が世界の活動に参加して、初めて実現に向かう。教育は、その判断力を育成する礎に他ならない」と書いています。これはユネスコの目標とほぼ同じものですが、たいへん重く、要となる言葉だと感じます。権威や体罰によってなにも考えず従う人間を作り出そうとする、日本教育再生機構産経新聞の目指す教育理念とは正反対ですが。