黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

警察庁の対策への各社報道、そして審議入りへ。

 昨日18日のニュースですが、記事をチェックしておきます。

児童ポルノ画像を分析 警察庁、被害者支援へ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/267583/

被害児特定し支援強化へ 児童ポルノ警察庁 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009061801000246.html

 配信時刻が10:31(MSN産経ニュースでは10:22)と早かったので産経の記事が界隈では注目されていましたが、中身は共同通信記事そのままでした。「児童ポルノ関連の報道には消極的」という解釈もできるし、あいかわらずリソースが足りないんだな、と見ることもできます。少なくとも、毎日・読売のようにキャンペーン状態で報道しているわけではないことは確実です。

asahi.com朝日新聞社):画像分析で製作者捕まえろ 警察庁児童ポルノ根絶作戦 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0618/TKY200906180132.html

 海外から規制強化圧力がかかっていることは報じていますが、二次元規制のことには触れていません。

警察庁児童ポルノ撲滅に向け重点対策プログラムを策定 : CNETニュース : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/cnet/20090619-OYT8T00584.htm

児童ポルノ、画像から捜査…警察庁に分析班 : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20090618-OYT8T00613.htm

 読売の紙面ではもうすこし大きな扱いだったはずなのですが(18日夕刊東京本社版では1面トップ下)、YOMIURI ONLINE内の独自記事としてはいまのところこれしか見つかりません*1。どのようにして画像を分析し被害者・製造者を特定するかという技術解説のような内容です。

児童ポルノ対策:画像特定に専門班 ネット遮断にも協力−−警察庁 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090618dde041040013000c.html

 千代崎聖史記者による長文の記事です。
 「規制すべし」という感情を煽る記述も多いのですが、全体には単純所持規制の必要性を強調するものです*2。特に紙幅を割いているのは、単純所持を禁止すべき「警察にとっての」理由です(これは「国民が納得しやすそうな建前を並べる」という意味も含みます)。要約すると、所持されているものが流通すると被害が永遠に拡大していく、といういつもの理由ですが、これは頒布目的所持罪を強化する理由にはなっても、単純所持罪を創設する理由にはなりません。交換目的のコレクターグループを全員摘発できなかった、という以前の事例を引き合いに出し、時効が成立しているメンバーも単純所持罪があれば捕まえられたのに、という捜査幹部のコメントがあるのですが、その法治を無視した発想が怖ろしい、と思います。
 
 そもそも警察庁は、今回のプログラムに被害児童の特定と救済を盛り込んだわけですが、児ポ法成立から10年以上、今までなにをやってきたんでしょうか。1999年の成立当時から、法律の目的が性的児童虐待の防止であることは明確にされ*3、買春やポルノ製造が児童虐待に当たるという前提で受け入れられてきたのです。しかも、引用した読売記事に詳しいのですが、今回の特定作業の目的も、製造者の特定に使うためであって、被害者救済の方法は「今後検討していく」というひどいものです。ちなみに今回の民主党案は、被害者救済の仕組み作りも明文化しており、少なくともこの点に関しては改正に賛成します。一番上に戻りますが、こういう意味では、プログラムが被害者救済を重視しているかのような産経・共同の見出しはひどいものです。

審議入りへ。

 というのを本来なら昨日18日に書くべきだったのですが後回しにしていたら、今日19日になってこういうニュースが入ってきました。

児童ポルノ禁止法:改正案26日審議入り 衆院法務委 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/today/news/20090619k0000e040073000c.html

児童ポルノ禁止法改正案、26日に衆院で審議入り : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090619-OYT1T00753.htm

 今のところ、報じているのは毎日と読売だけです。事前に予測されたとおり、延長国会の終盤に向けて自公与党は、さまざまな法案の審議を進めようとしています。児ポ法はその一つであり、おそらく世間的には、海賊対策法や憲法審議会設置に比べると取るに足りない問題と思われているでしょう。しかしこの問題にはさまざまな切り口があり、その一つの切り口にして、今回の国会審議ではおそらく最大の争点になるであろう点が、単純所持罪創設の是非です。いまさらながら確認しておきますが、「単純所持」とは、販売目的ではなく、金銭抜きで交換したり公開したり見せびらかしたりが目的でもなく、単純に持っているだけ、誰にも見せないで持っているだけ、という状態のことです。これはエロゲ規制とかロリヲタ氏ねなどとは関係のない問題であること、冤罪などに結びつく問題であること、単純所持罪は国民の人権と警察の利権の対立であるということを、きちんと確認しておきたいと思います。
 現在の状況や今後の見通しについてはslpolientさんがまとめていらっしゃるので、こちらを見た方が早いと思います。

速報!!児童ポルノ法改定案審議入り - 日々のものごと日記
http://d.hatena.ne.jp/slpolient/20090619/1245407427

*1:昨日図書館で紙面で確認したとき、時間もなかったし当日ではコピーも取れないので電子版を待てばいいや、と思って、じっくり読んでいませんでした。

*2:意外でしたが、毎日はこの記事では外圧の存在や二次元規制には触れていません。

*3:児童虐待防止法の成立は2000年、児ポ法の翌年です。暫定的に、もっとも被害のひどいところから手をつけようという名目で成立した法律であり、本来なら児童虐待防止法に吸収させて児ポ法は廃止してもいい性質のものなのです。児童虐待防止法でマンガを規制できるとは、まさか誰も思わないでしょう。改正のたびに利用されてきた3年後見直し条項も、本来は児童虐待防止法に合わせた見直しも想定されていました。