黙然日記(廃墟)

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産経、説明責任を求め説明責任に触れず。

【主張】西松事件初公判 これでも責任はないのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/268495/

 しばらく前にも似たようなことを書いた記憶があるのですが、献金した側の意図が明らかになったところで、献金を受けた側の意図はわかりません。昔の贈収賄事件なら、贈賄側の有罪が確定すれば「金を贈った」という事実関係も確定し、収賄側の裁判に大きく影響しますが、このケースでは「政治団体経由で金を贈った(献金した)」という事実は最初から確定しています。そこにどんな意図があったか、という点が問われているので、片方が見返りを期待していたとしても、片方の有罪を立証できるわけではありません(しかも、献金側の裁判はまだ結審したところで、有罪が確定しているわけでもありません)。団体名義で手続きをクリアしている献金を、よほど汚い金だと明らかにされていないかぎり、断る政治家はいません。これが個人献金中心になると、何百万、何千万口の献金をいちいち背景を調べなければならないということになって、政治家が本来の仕事をできなくなってしまいます。
 小沢一郎氏がクリーンだとは思いません。違法ぎりぎりのことをやっているようにしか見えません。しかし、「違法ぎりぎり」はすなわち合法で、それを法的に処罰する方法はありません。政治家としての小沢氏が責任を取るとしたら、このグレーゾーンを新たに規制する法律を作るかたちであり、そのかたちはすでに企業献金禁止化へとして説明されています。
 産経「主張」の求める「説明責任」とは、いったいなんなのでしょうか。

【土・日曜日に書く】論説委員・皿木喜久 今も晴れぬ岸信介の「憂鬱」 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090620/plc0906200309000-n1.htm

 あの60年安保から(いや、直接は知らないのですが)、この19日でちょうど49年になったそうです。元論説委員長の皿木氏がこれを振り返り、騒動になった理由を考察しています。結論としては「国民が馬鹿だったから」と言いたいようですね。政府・岸内閣の説明不足があったことは指摘しながら、それでも国民と社会党とマスコミが悪かった、と。日米安保条約は日本側の非武装・対米従属を前提とした条約で、60年改定はこれに米軍による保護義務を明記したものですから、護憲派社会党が反対したのは矛盾だ、という指摘なら、あるていど理解できます。しかしその責任を政府内閣とマスコミではなく国民の無理解に求めるのは、特に冷戦時代の当時に、事実上の保守側広報紙として存在していた産経新聞の責任、国民に条約の利点を説明するべきだった責任を、軽視しすぎではないでしょうか。
 「今屈したら日本は危機に陥る。私は声なき声に耳を傾けねばならないと思う」という、当時の岸信介首相の言葉が引用されています。つい2年ぐらい前、世論調査も国政選挙の結果も出ているのに自分には国民的人気があると信じ込み(街頭演説で動員されたサクラの拍手を本物と信じ込んでいたという説があります)、岸と同じようなことを言って政権にしがみついた首相がいました。その元首相と岸は、どこか面影が似ているような気がします、なぜか。岸信介は(CIA工作員としての)大任を果たしたあと、潔く辞任したのですけどねえ。