黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「主張」の空回り。他。

 えーと、4月30日分です。

「主張」「産経抄」、一致せず。

【主張】「体罰」判決 毅然たる指導こそ必要だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/248554/
親が教師の悪口をいったり、誰かが甘い顔で規則破りを許したりしては子供から信用されない。

産経抄】4月30日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/248539/
ささいなことで教師をつるし上げる「モンスターペアレント」を勢いづかせるばかりだ。

 子供にとっては教師より親の方が大切な存在なのは言うまでもありませんが、産経を真に受けて親を化け物扱いする教師がもしいたら、子供にはどう見られるでしょうね? 
 この産経抄については、碧猫さんのツッコミも必読です。

Gazing at the Celestial Blue 産経に関して確認した驚愕の事実
http://azuryblue.blog72.fc2.com/?no=658&ul=31361b09fd9c9c2a

「主張」、空騒ぎする。

【主張】日中首脳会談 表面的互恵で済ませるな - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/248552/

 見出しからはわかりにくいのですが、中国政府がソフトウェアやIT機器のファームウェアに関して、すべてソースコードを開示するように求めた問題についてです。昨年5月に実施要項が発表され、この5月1日から施行される予定でしたが、4月29日になって1年延長され、対象も政府納入品のみと限定されました。
 ソースコードってなんじゃらほい、それの開示にどーゆー意味があるんかい、という疑問がまず出てくるわけですが、とりあえず「(ソフトウェアの)設計図」という説明は、言われてみればたいへんわかりやすいものです。実際にソースをいじったことがあると、なかなかこういう単純な発想は出てこないのですが*1。その設計図を中国政府に向けて開示すると、政府経由で中国企業に盗用されるかもしれない、という懸念は、懸念としては当たっているかもしれません。こうした懸念については、適切なものでしょう。「ソースコード」の開示を義務づけるもので、世界にも例がない。」という「主張」の一文を読むと、たいへんな事態であると判断せざるを得ません。
 もちろんIT系ニュースサイトでも、この問題は大きく取り上げられています。

ASCII.jp:中国ソースコード強制開示 延期になったが大丈夫?
http://ascii.jp/elem/000/000/413/413922/

 ASCII.jpの記事にもありますが、もとは24日に読売新聞が大きく報じたことで騒ぎが広がっているようです。

ソースコード開示、中国強行…知財流出の恐れ : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20090424-OYT8T00378.htm

 で、この読売記事に誤解を招く表現があり(あるいは読売も誤解しているというか理解できていない)*2、騒ぎが拡大しているわけです。ASCII.jp記事でも強調されていますが、公的機関へのソースコード開示自体は各国で義務づけられています。今回の中国の措置に問題があるのは、日米欧では自国の公的機関に開示し認証を受けることで相手国も認証したものとみなす仕組みがあるのに対して、中国は相互認証に参加しておらず、手続きが二度手間になるという点なのです。技術流出は二の次というか、普通は政府当局をあるていど信頼しなければ製品の輸出入なんかできませんから、いちいち言ってたらきりがない、という話です。*3
 もちろん問題がないわけではありません。少なくとも企業に無意味な負担を与えるような政策ですから、中国政府は考えを改めるべきでしょうし、様々な面で国際商取引のルールに従ってもらいたいものです。しかし産経「主張」が明らかな誤認に基づいて、領土問題や国家主権まで持ち出して騒いでいるのは、なんとも恥ずかしいかぎりです。

*1:すみません、偉そうなこと言ってますが hello.c で止まってます。

*2:どの先進国も採用していない異例の制度」という部分は、後で説明するようにある面では正しいのですが、この書き方だとソースコードの開示自体が異例というように読めますね。

*3:念のため、このASCII.jpの記事も、いささか危機感を煽りすぎのようにわたしには読めました。