産経「主張」の歴史的社会観。
【主張】昭和の日 苦難の時代から学びたい - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/248244/
多くの人がゴールデンウィークの初日という認識であろう4月29日ですが、《昭和》を振り返るきっかけとすることに異存はありません。しかし産経「主張」の考える《昭和》は、戦後*1しばらくの期間だけであるようです。この文章を読んでいくかぎり、そうとしか思えません。
たとえば、「勤勉」「忍耐」「助け合い」「結束」などを日本的な価値観として並べ(この列挙が妥当か、といったことは別にして)、それを国民が敗戦直後に「取り戻し」、繁栄の後に「再び忘れてしまった」という認識は、どこから来るのでしょうか。1980年代ごろにそれが忘れられていた、というのはいいとして、なぜ「再び」なのか。戦後復興期に「取り戻した」という表現と合わせると、戦時中は「忍耐」「結束」「日本的価値観」が一時的に忘れられていたということになりますが、これはわたしの歴史的社会観や、おそらく世間の常識とも、かなり異なるものです。世間の常識と異なっているだけなら、ああいつもの産経史観か、というだけですが、この「主張」の認識は、産経「正論」路線がいままで掲げてきた無数の論説にも、類を見ないものではないでしょうか。
その他にも、《昭和》が敗戦直後から始まったかのような物言いは、つまり「昭和の日にあたって戦前・戦中のことを振り返る必要はない」ということなのか。一方で、「戦後レジームからの脱却」を昭和が先送りにしてきたという認識は、《戦後》の四十数年だけを《昭和》とする上述の歴史観に反していないか。様々な点で、摩訶不思議な産経的《昭和》の世界が繰り広げられています。これはやっぱり、《日本の昭和》と《ニッポソの昭和》が別物ということでしょうかねえ。