黙然日記(廃墟)

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産経抄の司法観。他。

産経抄】4月22日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/245528/
▼もし弁護士がすご腕で、被告が涙ながらに無実を訴えたら…。自白がなく、状況証拠だけで起訴された被告に裁判員は短期間で「死刑」の判断を下せるだろうか。

 ……しばらく言葉を失いました。これはひどい。あまりにひどい。あらゆる物証によって有罪と判定できる裁判で、否認する被告に死刑を宣告できるか、という問題提起ならまだ理解できますが(それにしても、最強の物証と思われているDNA鑑定の信頼性が問われるケースがあったばかりです・後述)、自白も物証もなければ、そもそも有罪なのかどうかから問われなければなりません。その意味では、今回の最高裁判決についても疑問がもたれるのですが、たとえ判決を肯定するとしても、産経は「産経抄」「主張」で繰り返し、裁判員に死刑以外の判決を求めない姿勢を示しています。
 産経は、裁判員制度をなんだと考えているのでしょうか。水増し動員までして制度導入を支援したのは、警察が捕まえた奴はみんな死刑にしてしまえという目的のためだったのでしょうか。

【主張】毒物カレー判決 裁判員に丁寧な説明肝要 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/245540/

 「主張」の方も同じテーマを取り上げていますが、さすがに(産経の考える)裁判員制度が死刑を前提にしているとは明示しておらず、こうしたケースでプロによる説明が必要、と強調しています。しかし「産経抄」と併せて読めば、基本的な姿勢が共通していることは明らかでしょう。

因数分解足利事件 DNA型一致せず 「科学万能」に一石 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/245522/

 記事そのものはわりとどうでもいいので、区切り線代わりだと思ってください。上記のDNA鑑定関連です。
 kamayanさんのブログで以前、「栃木・茨城・群馬では20年以上にわたり、幼女殺害事件・幼女行方不明事件が続いている*1という指摘がありました。足利事件の服役囚は冤罪(犯人でっち上げ)であることが、すでに2000年の時点で「フライデー」によって報じられていたようです。今回再審無罪となれば、この事件は、また周辺の類似事件は、再び迷宮入りになるわけです。もうひとつ、この服役囚はたまたま無期懲役刑だったので技術の進歩によって再審の道が開けましたが、死刑判決が下されていたら、どうだったでしょう。近年の傾向としてあっさり執行され、再審は行われず、解決済みの事件として真犯人は永久に追求から逃れたままだった可能性が高いのです(再審無罪となってもすでに時効が成立しているので、真犯人を捕まえられるわけではないのですが)。死刑制度の根本的な問題点と、死に神のように死刑執行を急ぐ意図への疑念まで浮き彫りにするケースではないでしょうか。

[assort]その他。

【主張】小沢氏遊説再開 政治不信を増幅するだけ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/245529/

 watchなので取り上げておきます。いつもの小沢批判か、と思ってスルーしようと考えたのですが、後半では企業献金に関する自民党の体質に強く疑問を投げかけていて、産経「主張」としては異彩を放っています。どうしちゃったんだろう。

加地伸行氏「正論大賞受賞記念」東京講演の要旨 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/245831/

 見出しのとおりの講演要旨です。あえて論評は控えますが、加地氏の思想はもとより、産経「正論」路線が教育・儒教・価値観などについて、どのような方向を目指しているのか、たいへんよくわかるテクストなので、メモしておきます。