黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経の無批判体質、他。

 今日は「主張」*1も「日本代表という「日の丸」に対する国民の期待」とか馬鹿なことを言っていたり、「正論」*2渡辺利夫拓殖大学学長はそんなに福沢諭吉が好きならなんで拓大なんだよ(笑)とか*3、いくつかネタにしたかったのですが、夕方からちょっとそれどころじゃない事態になってしまったので、それまでに書いたものだけ。

サブカルちゃんねる】B型のためのテレビ番組です - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/other/227753

 なんですかこの差別コンテンツは。人間の先天的な特徴を笑いものにする行為を差別といいます。メジャーシーンに乗らないコンテンツ作製のパワーとか、そういうテーマの記事であることはわかるのですが、なんの批判もなく*4こうしたコンテンツを紹介する無神経さにはほとほと呆れます。
 ちょうど血液型問題を扱ったブログエントリを読んだばかりだったので、なおさら気になりました。

村野瀬玲奈の秘書課広報室 | 「血への信仰」はいらない。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1127.html

ssh253 ssh的血液型性格診断考〜血液型に関する小ネタの余白の余白:ssh-スーパー小論文ハイスクール:So-net blog
http://sshshouron.blog.so-net.ne.jp/2009-02-09

 血液型への信仰は、科学的に見せかけて実は根拠のないものを無批判に受け入れる似非科学の温床になるという問題の他に、上記のとおり、直接的な差別行為なのだということを、改めて認識する必要があります。
 ついでに。血液型信仰への批判として、「人間の性格がたった四種類に分類できるわけがない」というものがありますが、これは違うと思います。たとえば(血液型と無関係に)「神経質」「無神経」のたった二種類に分類することは、よく行われています。しかし、村野瀬さんが引用しているshiraさんのご指摘から気がついたのですが、「A型は真面目でAB型は神経質」「O型はおおらかでB型は無神経」っていうのは、性格分類でもなんでもありませんよね。それぞれ同じ性格に対して別の呼び方をしているだけに過ぎません。

[opinion]オピニオン誌へのオピニオン。

 オピニオン誌の休刊が相次いでいます。根本的な原因としては部数低迷によるもので、そのへんの細かい話は後述します。ともあれ今日もまた、保守系または右派を代表するオピニオン誌「諸君!」の休刊が発表されました。

「諸君!」が休刊へ 創刊40年、部数低迷などで - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/breview/227700

 この産経新聞記事では休刊の理由を「文芸春秋は「全社的な事業見直しの一環として休刊を決めた」としている」とし、左寄りとされていた「現代」(講談社)「論座」(朝日新聞社)の休刊にも触れています。

創刊40年「諸君!」休刊へ 部数低迷 - asahi.com
http://www.asahi.com/culture/update/0302/TKY200903020297.html

 一方こちらの朝日新聞記事は、「論座」の休刊には触れていません(さすがに「現代」のことだけ触れるということもしていません)。休刊の理由として、四十周年の節目と並べて「選択と集中を進める」(同社幹部)」を挙げ、新自由主義的には休刊は自己責任ということをはっきりさせています。
 さて。「論座」「現代」の相次ぐ休刊に対し、「サヨ涙目、保守系は売れているぞ」と嬉しそうにコピペし回っていた人たちは、このニュースをどう聞いたのでしょうか。
 ところで、「正論」はまだかな?
 
 オピニオン誌の休刊について、うだうだと述べてみます(ここから先は読み飛ばしてもかまいません)。単に出版不況というにとどまらず、オピニオン誌の機能がネットで代替されつつあることも大きな理由のひとつでしょう。オピニオン誌を読んでいると「この記事に一言申したい」と思うことはよくあり(というかそれが存在意義のようなものであり)、まずその機能が掲示板等で代替され、さらに著名ジャーナリスト*5の記事もブログとしてネット上で無料で発信される傾向が強まり、さらにコメントやトラックバックで直接反論を伝えられるようになると、オピニオン誌の存在意義はどんどん薄れていきます。ある事件が起きたとき(たとえば政権交代目前に最大野党代表の政治資金問題が発覚したとき)、それをあの論者はどう評価するだろう、という期待に対して、オピニオン誌の反応は一ヶ月後、本人のブログでは早ければ即日に意見がわかるのですから、話になりません。一方、たとえば新聞の電子版では次から次とページを開いてもらえるので広告収入もあるていど期待できますが、オピニオンについてはそうしたビジネスモデルも成立しにくい状況があります。雑誌に比べると配信コストは驚くほど低い(独自ドメインでも年間数千円、無料ブログサービスを利用すればゼロにもできる)のですが、論者の収入もほとんど見込めないので、オピニオン誌がすべてネットに移行することは不可能だろうと思います。そういう意味で、記者ブログとニュース記事を連動させるiza!の試みは本当に興味深いと思うのですが、一般iza!ブロガーの質に最大の問題がありますね(笑)。あとは、ポータル系のニュースサイトに付随するコラムとしてオピニオンを掲載してもらうぐらいしかなさそうです。これはかつて新聞がやってきたことと同じですが、限られた紙面に長い論説を掲載することができないために「正論」「論座」などが独立創刊されたのとは、同じようにはいかないだろうと思います。
 オピニオンへのニーズはあるのでまったく廃れてしまうことはないでしょうが、専業の「評論家」のたぐいが成立しなくなり、誰でも発言できる中から優れた意見が注目されていくという、「誰が言ったかよりなにを言ったか」の時代になるのかもしれません。かなり希望的観測ですが。

【異論暴論】正論4月号 From ケータイサイト 「麻生支持4割」の意味 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090303/bks0903030826001-n1.htm

 ついでに。3月から産経の紙面がリニューアルされ、わけのわからないコーナーが増えたのですが(電子版だけかもしれませんが)、雑誌「正論」の内容紹介も始めたようです。「正論」サイトの会員アンケートで麻生内閣の支持率が4割というのは驚異的な低さだと思うのですが、櫻井よしこ氏はこれを高いと評価し、紹介記事としても「通常の世論調査〜だけでは見えない民意の断面」だとか言っています。ある意味、「正論」は永遠に潰れないのかもしれません。

*1: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/227503/

*2: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/227484

*3:念のため、渡辺氏は慶大OB。しかし教員にはなっていません。

*4:問題のDVDに血液型差別を逆手に取った批判精神が仮にあったとしても、この記事からは伝わってきません。

*5:こもりん、花さん、あびるん等含む。「著名」ではあります。