黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経の幸福論。

 日付が変わってしまいましたが、5日分です。

【軍事情勢】テロを許すまじ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/215656/

 先日*1も取り上げた記事ですが、書き足りなかったというかあとになって思い至ったところがあるので。
 「民主主義国家における憲法は、究極的には国民の幸せのために在り、人権は幸福を創造するための一手段である」と野口記者は述べているのですが、はたして本当にそうなのでしょうか。「人権がない状態での“幸福”」を意味する、「奴隷の幸福」という言葉があります。逆に、人権が保証されている状態なら、基本的人権の中に含まれる生存権や幸福追求権も保証されているはずです。人権と“幸福”は、どちらが優先されるのでしょうか。

産経抄】2月5日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/219195/

 ということろで、今日の「産経抄」です。ハックスリー『素晴らしい新世界』を例に引きながら、人権のない“幸福”な社会が、実は幸福ではないのだということを語っています。下層階級の人々はすべてを搾取され、お金のかからない楽しみをもてないという、逆理想郷・ディストピアを描いた小説です。
 16世紀にトーマス・モアが『ユートピア』で描いた理想的な管理社会は、現代ではディストピアとみなされるようになりました。近いところでは(ハックスリーの認識でもあるでしょうが)マルクスエンゲルスの示した、資本主義を克服した社会主義から共産主義への道が、最初の一歩は素晴らしかったにしても、途中から最終目的までが必然的に自由を抑圧した全体主義、すなわちディストピアへの道にしかなり得ないことが、20世紀の現実を通して証明されてしまいました。人権が保障されず人間の尊厳が踏みにじられる「奴隷の幸福」の社会は、産経にとっても否定されるべきもののようです。上述の「軍事情勢」を始め、てともそうは思えない記事もしょっちゅう掲載されているのですが。