黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、夢想を語る。

【正論】同志社大学教授・三木光範 「振込詐欺」を退治する3方法 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/216901

 なんですかね、この浮世離れした空理空論は。パソコンの安全性確保にはセキュリティホールをふさぐ、ファイアウォールをかませる、ウィルス対策ソフトを入れるの三種類があり、振り込め詐欺の対策にもそのまま応用できる、と論じています。単なるアナロジーの思いつきにすぎません。
 現実社会における「セキュリティホールをふさぐ」は、個人が振り込め詐欺の知識を身につけることだそうです。振り込め詐欺の存在を知らない人はいないし、いたとしたら認知症などでその知識に対応できない場合であり、また、銀行のATMコーナーではポスター等はもちろんアナウンスがエンドレスにかかって警戒を訴えています(行列で待っているときはうるさくてしかたないのですが、やめろとも言えないし)。また、ATMの前では携帯電話も使えないように対応されているようです。それでも被害が発生しているわけですから、セキュリティホールが「知識」ではなく「人間心理」にあることは容易に想像できます。
 「ファイアウォール」は、第三者が常に電話をモニターするサービスのことだそうです。これが非現実的であることは、さすがに三木氏もわかっているようですが。
 「ウィルス対策ソフト」に相当するのは、電話を自動的に録音することだそうです。たしかに、詐欺師側の心理への対策としては一定の効果があるかもしれませんが、組織的な犯罪で電話をかける役も下っ端にやらせている場合にはどうでしょうか。もちろん、かけてくる携帯電話も振り込ませる口座も他人名義の使い捨てです。高齢者世帯に1万円の録音機能付き電話を配布しろというにいたっては、実際に電話機を買ったこともないのか、と思わざるを得ません。
 パソコンの安全対策にしても、はるかに低コストで実現できるものがなぜいつまでもウィルスやマルウェアが蔓延しているかといえば、セキュリティアップデートやファイアウォールの警告がうざいからとまるごと切ってしまったり、年に数千円のアップデート費用を惜しんだり(無料あるいは無期限の対策ソフトの存在が知られていないためもあるでしょうが)、結局はそうした人間心理の穴が問題であることを、計算機科学が専門の三木氏はご存じないのでしょうか。
 まあ、いつもの「正論」欄のような、天下国家に浮世離れした妄想を押しつけるよりは、まだ罪のない文章ですが。