黙然日記(廃墟)

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産経、今年もあらぬ方向に錯誤。

 あけおめです。とりあえず、たいへんおめでたい記事から。埼玉新聞電子版の1月1日付トップニュースです。

らき☆すた」の家再現 作者旧宅を交流施設に - 埼玉新聞
http://www.saitama-np.co.jp/news01/01/01l.html


 


 気を取り直して次にまいりましょう。おめでたいといえばやはり産経新聞です。

産経抄】1月1日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/209157/

 大伴家持の新春を言祝ぐ歌の引用から始まる、元日らしくめでたい「産経抄」です。……と思ったら大間違いで、産経新聞は今年も(あらぬ方向に)頑張るぞという宣言文、ある意味たいへん新年らしいコラムでした。
 なにしろ、家持つながりで持ち出してくるのが「海ゆかば」ですよ。戦時中には軍国歌謡になって、広く知られた歌です。元日の朝から「屍(かばね)」とかの文字を見たくないんですけど*1産経抄が、貧乏人は大企業や政府に文句を言わず従え、と素晴らしいご教訓を下さったのはつい4日前の12月28日でしたが、黙って従え後悔するな、というご教訓の対象が今度は「大君」に向かったようで、何度も言いますが、かしこきあたりもさぞかしご迷惑なことでしょう。殿下のご発言を自社宣伝のために捏造するような新聞に、これ以上粘着されちゃねえ。
 この「海ゆかば」を、わたしは小松左京氏の名訳から知ったのですが、少なくともこっちの方が新年らしく平和でいいと思います。

海ゆ河馬 水漬く河馬寝(Go to sea hippopotamus, water stick hippopotamus sleep.)
山ゆ河馬 草むす河馬根 (Go to mountain hippopotamus, grass steamed hippopotamus root.)

【正論】天皇の20年 小堀桂一郎 皇位継承に制度的安定を - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/209158/

 こちらもある意味新年らしいコラムですが。……はあ。粘着具合が「産経抄」の比ではありません。天皇誕生日の「主張」に続いて元日の「正論」もこれですからねえ。
 旧仮名遣いでお馴染みのこぼりんによると、皇位継承問題は喫緊の課題なのだそうです。2年半前まではそういう主張も大手を振っていましたけどね。ほぼ2年3ヶ月前の9月6日から、状況はまったく違ったものになっています。2年3ヶ月、もう喋ったり歩いたり、可愛い盛りですよねえもっと動画くれ(*´Д`)ハァハァ。という2歳の人間にとっては1日が非常に長く、2年間といえばまるで全生涯に匹敵するほどに感じられるのに対して、80歳になると(小堀氏は1933年生まれ)2年なんてあっという間、人生の1/40ぐらいにしか感じられなくなるのはよく知られています。しかしいくらなんでも、今後少なくとも20年は問題にならず、深刻な事態になるまでに40年はかかるだろうという問題に関して「喫緊の課題」という表現は、どういう言語感覚・時間感覚なのでしょうか。*2
 一方、“Y染色体”でお馴染みの八木秀次氏ら、多数の「正論」メンバーを含む人々が作った「皇室典範研究会」は、状況の根本的な変化をまったく無視して論議を続け、旧皇族の復帰を柱とする報告書を昨年10月に発表していたんだそうです。基本的に時代錯誤な人々ではありますが、現実の状況まで錯誤しているとは思いませんでした。ところで検索してみると、小堀氏が代表を務める「皇室典範問題研究会」という団体も存在したようですが、両者の関係はどうなっているのでしょうか。文中に登場する「皇室伝統を守る国会議員の会」なる団体にいたっては、ぐぐってもこの小堀「正論」にしか今のところ出てきません。「皇室伝統を守る国会議員の会」という議連ならどうやら存在するようですが、旧仮名遣いにこだわる前に、自分の関わる固有名詞ぐらいきちんと確認してから買い手ほしいものです。あるいは産経新聞校閲部がきちんと仕事をするべきですが、これは期待するだけ無駄か。ちなみにこの議連の世話人は、平沼赳夫議員が務めています。またか。

*1:ということを元日のうちに書くのもなんですが。ご不快になられた方にはもうしわけありません。

*2:ある理由というか憶測から、この問題について個人的にはたいへん楽観視しています。具体的にその根拠を述べることは、皇室を敬う者として控えますが。