黙然日記(廃墟)

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産経コラムは国語ができません。

【コラム・断】国語ができますか? - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/dan/207992

 富岡幸一郎氏が、国語教育について論じています。古典や名文などの「声に出して読みたい日本語」をとにかく数多く読ませろという、産経紙面ではおなじみの教育論です。これは、どっかにテンプレがあるんでしょうかね。もちろん、斎藤孝氏のベストセラーを踏まえているのでしょうが、それにしてもあまりに似通いすぎています。ちなみに富岡氏は日本会議とはだいぶん近しいのですが*1、斎藤氏に関してはよくわかりませんでした。別のつながりかもしれません。
 文芸評論家としての富岡氏の立場からはそれでいいのかもしれませんが、論説文の内容を要約する試験問題が必要ない、という意見はどうでしょう。内容を要約する、つまり主題を把握する、すなわち論説文を「読む」訓練の欠如が、国語教育の欠陥として詰め込み教育の時代から延々と指摘されているのですが、それが必要ないというのはどういうことでしょう。誰もが小説家や詩人になるわけではありませんが、論理的な文章の読み書きは社会人なら誰もが求められる能力です。実際に、他人の文章を読解できない人間をネット上でいくらでも見かけるわけで、この方面の教育はどう考えてもまだまだ不足しているでしょう。
 実はこの点では、昨日の「断」に登場した自称民俗学者の方が、まだ適切な問題意識を持っているようです。文芸の専門家である富岡氏が、国語教育への問題意識について大月隆寛氏以下というのは、あまりにひどい話です。

【コラム・断】「意味」を考えない人々 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/dan/207641/

 念のため補足しておくと、相対的に持ち上げましたが、このコラム自体は決して優れたものではありませんよ。

【正論】京都大学名誉教授・加藤尚武 金融危機に“渋沢精神”を思う - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/207991/

 加藤氏の指摘などが経済学的に正しいのかどうか、わたしも経済に無知なのでよくわかりません。ただ、儒教道徳を今の金融危機に当てはめ、みんな協力して浪費を控えればすべてうまくいく、という結論が大間違いなことだけはわかります。内容はさておきこの「正論」には、「正式社員」とか「サブプライムローン暴落」とか、ひどい表現が目立ちます。なかでも「「銀行」という言葉も、フランスの制度を見てきた渋沢の工夫で作られた」というのは、どういうつもりなのでしょうか。
 19世紀中国(清朝)で銀本位制が敷かれていたことは周知のとおりですが、当時の中国語で企業や商店を意味する漢字は「行」でした。欧州のBank、日本の両替商にあたる、貯蓄・両替・為替などを扱う商店、つまり銀を扱う商店が「銀行」と名乗ったのです。明治の日本は金本位制を採用し、企業や商店は「社」「店」と名乗りました。中国からの外来語でなければ、いったいどんな工夫をすれば「銀」「行」という名称が出てきたのでしょうか。*2

*1:関係ないけど、Googleはよく検索される単語を合成語ではなく一つの単語として認識するように登録されるはずなのですが、“日本会議”だけはいつまで経っても一単語として登録されませんね。

*2:以上の指摘には、渋沢栄一翁を貶める意図はありません。数少ない郷土の偉人だし。