黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経の呆れた論説陣、他。

 19日分です。たまには他メディアの話も。

週刊朝日 見出し一覧 | エキサイトニュース
http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG1/
対談、田母神論文は「上杉謙信が女だった」という珍説と同じだ | エキサイトニュース
http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG1/20081118/14/

 昨日発売「週刊朝日」11月28日号が、田母神「論文」の特集を組んでいます。ネット上に記事があるわけではないのですが*1、図書館で読んできたら、いろいろ興味深い内容のものでした。「論文採点の裏側」という記事では、花岡信昭氏の“証言”なども引用されているものの、このブログですでに紹介した内容よりツッコミが浅くて残念でした。テレビで「わたしは0点を付けた」と発言した中山泰秀氏の秘書に、放送直後に元谷外志雄氏から直接電話が入って怒鳴りつけられ、以後沈黙しているとか、そういう情報もありましたが。また、11日の産経新聞アパグループの全面広告として田母神「論文」が掲載されたことと、当日の産経「主張」が田母神氏を肯定していたことを結びつけていますが、これも追求が浅すぎます。産経は連日、田母神氏を擁護していたのですから、11日の「主張」で内容が重なったのは、意図してやったことじゃないのは確実でしょう(笑)。
 特集の目玉は、秦郁彦氏と田岡俊次氏の対談です。両氏の発言は、それぞれがすでに他メディアで書いている内容とほぼ重なるのですが、この対談では田岡氏が面白い指摘をしていました。アパグループが田母神「論文」の英訳を公開しているのは、機密漏洩罪ではないか、というのです。有名なソビエトジョーク「赤の広場で、酔っ払いが、『ブレジネフはバカだ!』と叫んでいた。すぐにKGBがやって来て、酔っ払いを逮捕し、懲役22年を言い渡した。国家侮辱罪で2年、国家機密漏洩罪で20年」*2と同じ意味かと思ったら(それも踏まえているのでしょうが)もうすこし真面目な話で、敵国の兵力を見積もることはできるが、指揮官の能力を判断することは難しい、しかしこれで自衛隊幹部の能力が明らかにされてしまった、という趣旨でした。やばいぞ日本

【コラム・断】暴走する「文民統制」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/dan/196935

 考えてみればもう20日間も産経新聞のどこかに載っている田母神「論文」擁護ですが、自衛官OBの評論家・潮匡人氏が、また極めつけのようなコラムを書いています(これで極めつけ、これ以上はあるまい、と思っているとさらに真上を行くから、産経論説陣は油断ならないのですが)。退役後に評論家を名乗るぐらいですから、おそらく自衛官出身者の中でもっとも知的な部類に含まれるのであろう潮氏が、「文民統制」という概念をなにかとんでもない意味で捉えているらしいことに、まさしくぞっとします。
 文民統制に関するマスメディアの扱いについて潮氏は、「反応したくないが、放言にも程があろう」と述べていますが、頼むからこっちのせりふを横取りしないでください。

【正論】米新政権を占う 同志社大学教授・村田晃嗣 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/196925/
 自分たちの持論だけが「真の近現代史」や「正しい歴史認識」であり、異論を唱える者は「反日的」といった狭量な発想では、論敵はおろか幅広い第三者の支持と理解を獲得することも困難である。

 今日の産経「正論」欄は、意外な内容でした。村田氏はこの「正論」の途中でも、オバマ政権下の日米関係を訊かれることが多いが、それ自体が対米追随の発想だ、と、おそらくこのコラムの依頼テーマそのものを鋭く批評しているのですが、結びのこの言葉は強烈ですね。名指しではないものの、アパグループ懸賞論文の題名を使って、それを擁護する産経新聞論説陣、また周辺の右派論説陣を厳しく指弾しています。執筆依頼者さえ呆れさせてしまう新聞の論調ってどうなのよ。

【主張】海賊被害続発 日本は傍観者でよいのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/196909/

 産経「主張」が何度も取り上げ、このblogでもツッコみつづけてきたソマリア沖海賊の問題ですが、最近さらに深刻化しているようです。今年1月から10月までに72隻もの船が被害に遭い、うち3件が日本関係船だったそうです。あとの69隻のうち、インド洋の多国籍部隊に参加している国の船がどのぐらいあるのかも知りたいところですが。
 この海賊対策として、国連安保理が制圧部隊の派遣を求めるという状況になっています。これは、インド洋の多国籍部隊が海賊制圧の役に立っていないことを意味するわけですが(目的が違うのですから当たり前です)、産経はこの期に及んでもまだ、無料ガソリンスタンド法案と結びつけることを諦めていないようです。ここまでの状況を説明した上で、なお法案採決を拒否した野党への非難に結びつけるなら、産経の言い分こそまさに政策無視の政局優先でしょう。

「奉仕の精神養う教育を」 正論九州懇話会 曽野綾子氏講演 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/196810/

 なんかしらんけど、このカルト集会 懇話会のレポートが、iza!ではオピニオン欄として配信されてくることがときどきあります。先日福岡で開かれた第245回全国縦断「正論」九州講演会では、あややこと曾野氏が講演し、世界には絶望的な貧困にあえぐ人たちがいるが、彼らはわずかな食料を分かちあい幸福を感じている、日本で格差とか言っている場合ではない、公に奉仕する精神を養え、とかいうご高説を述べられたそうです。世界と日本の貧困を救うのが「公の精神」だと、わたしなんかは思っていましたか。
 不思議なのは、先日紹介したデータのとおり*3九州では産経新聞の県別部数が軒並み3桁(福岡県のみ1500ていど)、沖縄を含めた九州8県の合計部数が3692部(2007年)という状態なのに、この講演会を主催した九州「正論」懇話会という団体が成立しているあたりです。これは、聖教新聞の部数と創価学会信者の戸数がほぼ一致するとか、世界日報の部数と統一協会の(ry といった関係が、九州では産経新聞と「正論」懇話会の間に成立しているような状況なのでしょうか。
 今気づいたのですが、見出しの「正論九州懇話会」というのは、団体の名前とも集会の名前とも違いますね。

*1:12/5追記:対談の全文をJodorowskyさんが公開されています。いつもありがとうございます。http://d.hatena.ne.jp/Jodorowsky/20081205#1228485951

*2:出典:アネクドート - WIkipedia

*3: d:id:pr3:20081104:1225810543 参照