黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経の対馬キャンペーン。

反応。

 昨日*1の続きです。とりあえず連載記事は終わったようですが、キャンペーンはまだまだ続きそうです。まず、世間の反応から見てみましょう。これだけアレな記事ですから、各所に波紋を広げているのは当然でしょうね。

産経抄】 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/189202/

 23日付の「産経抄」でも「対馬が危ない」を取り上げています。これはまあ、こんなものでしょう。

自民議員集団 28日に緊急会議 「対馬深刻看過できず - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/189355/

 政界ではこんな反応が出ています。議員集団というのはおなじみの、真・保守政策研究会です。会長は中川昭一(酒)氏、議長は島村宜伸氏。いったいどっちが偉いのか、外部の人間には見当もつきません。会議開催を発表した島村議長は、この記事の煽りをまともに受け取っているようですが、元文部大臣が新聞記事をまともに読めないようじゃ困りますね。中山成彬氏といい、歴代の文部(文科)大臣って、新聞や統計をまともに読めない人ばかりだったんでしょうか。日本の教育が危機的状況だといわれるのも納得です。
 島村氏がこの連載記事をどのぐらいまともに受け止めているかというと、22日に示したこの発表で23日掲載の(下)の内容を先取りしているぐらいです。

「領土と商業、区別すべき」「過剰反応だ」対馬めぐり韓国メディア - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/189450

 韓国マスコミの反応はこのようでした。ちょうど今日(23日)、第45回日韓編集セミナーが東京で開かれ韓国から多数の新聞関係者が訪れていたそうです。記事掲載のタイミングについて、ちょっとうがって考えてしまいそうです。最近までソウル支局の花形だった久保田るり子記者が、韓国日報と国際新聞からの出席者、他に名前の出ていない複数の韓国側出席者による意見が紹介されています。それぞれの意見を並べるところで、久保田記者は「〜との発言もあったが」と逆接でつなげているのですが、どの意見も要約すれば「商売と政治の話は関係ないだろ、あんた(産経)はなにを言ってるんだ」というもので、逆接を使うのは不適切ではないかと思われます。


 両記事とも産経の記事です。ところでまったく関係ない話ですが、ちょっと度忘れしてしまった言葉があります。マッチで放火しておきながらポンプで水をかけてみせることを意味する成語があったと思うのですが、なんでしたっけ。世の中には、ポンプで油をかける新聞もあるみたいですが。まあしばらくはこのキャンペーンを続けるつもりでしょうから、こちらもせいぜいおつきあいいたしますか。

元記事(下)。

対馬が危ない】(下)生き残りへ苦渋の“歓迎” - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/189374

 (下)の前半は、どこにでもある離島(あるいは地方)の苦境を伝える内容でした。島全体の人口が3万7千人という話をしているときに、いきなり「残った若年労働者は各地区に2人いるかどうか」という数字が出てくるあたりが、問題といえば問題なていどです。普通ならこれだけでエントリ1本書けるぐらいの問題ですが、文字通り大事の前の小事です。


 記事の後半では、これは国境問題、ひいては国家主権の問題だとして、「防人の島新法」の制定を求めています。あらためて確認しますが、対馬の韓国観光客向け不動産が韓国資本に買われているというだけの話についてです。ちょっと気になったのが、財部能成・対馬市長がこの新法制定を求めているというあたりですが。*2
 対馬市民全員がこの産経記事のように思っているとは考えづらいのですが(産経のキャンペーンはたいてい逆に考えた方が事実に即していることが経験的にわかっているため)、多少の賛同者はいるのでしょう。誰だか知ませんが“島民”の一人が、こんな発言をしたそうです。

 「韓国によるリゾート化は、密航組織に利用される懸念があるうえ、有事の際にはゲリラの潜入さえ可能にしてしまいかねない」

 いやあ。
 なんつうか。
 大韓民国はいつから日本国の仮想敵国になったのでしょうか。
 隣に住んでいて価値観が一致する(自由と民主主義を大切にするとか白いご飯がなにより大事とか)人とは仲良くしたいとわたしは思いますが、宮本記者やこの発言をした“島民”は違うんですかね。あんたが友達なくすのは勝手だけど、他の日本人を巻き込むなよ。


 とりあえずまとめとして。「日本人の国境に対する感覚は極めて希薄」という財部市長の発言は興味深いですね。希薄というより、国境というものに馴染みがないので、どう反応していいのかわからないと言うべきでしょう。そこで逆に過剰反応すると、この産経対馬キャンペーンのようになるわけです。友好国の国境がどんなものか、とりあえず米国とカナダの国境でも見てきたらどうでしょう。

*1: d:id:pr3:20081022:1224687603

*2:もうひとつ気になったのが、その新法ができた場合、蘂取村択捉島最東部)に適用されるのか根室市に適用されるのかというあたり。