黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、なにがなんだか。

【正論】芳賀綏 雅量を欠くメディアの醜態 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/178955/

 17日付産経「正論」ですが、なにがなんだか、さっぱりわからない文章です。産経「正論」らしいといえばらしいのですが。
 なんだか知らないけど芳賀氏は、森元首相を礼賛しています。小泉礼賛ならまだわかりますが、なんでよりによって森元氏、じゃなかった森喜朗氏なのか、まずそこから不思議です。
 冒頭でチャーチル吉田茂の逸話を紹介していますが、これが本筋と全然関係ありません。森氏が首相時代に歌舞伎観劇の予定を立てたらメディアに批判されて取りやめた、という一つのエピソードだけから延々と論を展開するのみで、「もし吉田が現職首相時代に観劇に行ったら」という、藁人形にもなっていない妄想を披露されたって、読んでいるほうが困ります。だいたい、後任者の小泉純一郎氏が首相当時にオペラを観劇したことをメディアが褒めそやした、という事実に自ら言及した時点で(芳賀氏はこれを勝手に例外扱いしていますが)、すべての論理が破綻しています。もちろん、森氏と小泉氏の個人的な人気の差が極端であったにしても、メディアがそれに迎合して同じ行動に非難と賞賛を使い分けていたことは、また別に論じるべき問題です。しかし、メディア批判を目的とした文章のはずなのに、この「正論」にはそういう視点もないわけです。
 さらに芳賀氏は、森氏の「神の国発言」問題に関して、攻撃したメディアは文化人類学などの知識がない、と決めつけていますが、これも凄まじいですね。「日本は八百万の神の国」あるいは単に「日本は神の(宿る)国」という発言だったら、誰も攻撃なんかしませんでした。「日本は天皇を中心とした神の国」という、国家神道を前提とした発言が問題とされたのであって、この発言の略称が「神の国発言」だったにすぎません。芳賀氏はこの「神の国発言」への攻撃を「無知・無思慮・無情操で見当違いの取材者群」によるものと断じていますが、芳賀氏こそ発言の具体的な内容と、国家神道が現代の政治でどう扱われているかについて、無知・無情操なのでしょう。そうでなければ、彼は無思慮であるか、政教分離原則を無視する思慮で事実を歪曲して伝えているか、いずれかということになります
 最後は、「死に神」表現問題における素粒子子の弁解を取り上げていますが、どう見ても難癖です。素粒子子が「風刺は難しい」つまり「あれは諷刺としてレベルが低かった」と認めた文章に対して、「諷刺としてレベルが低いことを認識できていない」という非難を浴びせているのは、いったいどういうつもりなのか理解に苦しみます。「死に神」表現への批判は他にいくらでも切り口があるだろうに、なぜよりによっていちばん的はずれな方向から噛みつくのか、これはもう一種の才能ではないでしょうか。
 これだけ他人の文章を読解できず、他人に伝わる文章も書けない人から「人心の格調」だの「神大」だの言われたって、ちゃんちゃらおかしいや、ぐらいの感想しかありません。