黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、亡霊を見る。

【正論】佐伯啓思 「マルクスの亡霊」を眠らせるには - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/165587/

 最初の小見出しがいきなり≪急速に左傾化する若者≫で、脱力してしまいました。ここ数年の日本がおかしかっただけだってば。
 佐伯氏(1949年生まれ)は、自分の世代はマルクスを卒業するところから始まった、としていますが、ここ15年ほどは「マルクス主義は死んだ」と声高に叫ばれ、なかったことにされ、卒業どころか入学も「できない」状況が続いていました。まず知らなければ乗り越えることもできないのですから、再評価とかいう以前の問題です。ただ本来なら、1991年にマルクス主義が葬り去られて、それで終わっていたはずの話なんですけどね。
 実はこのあと、この佐伯「正論」は重要な指摘をしています。戦後の資本主義は大量生産によって安定した経済を生み出し、「資本主義が発展すると労働者の不満がたまって必ず社会主義に移行する」というマルクスの予言は外れたが、近年は新自由主義グローバリズムがコスト削減の名目で労働者を圧迫しており、予言された危機を再来させてしまった、という指摘です。実はこの考えは現在のわたしの視点にも近いのですが*1社会福祉の観点が抜けているなあとか、大量生産とコストダウンは無限に続くわけじゃないだろうとか、そういうことも思いましたが)。しかし、マルクスの予言を実現させてはならないとしたら、そのためには、彼がなにを述べたか、きちんと研究し、学び、伝える必要があるはずです。
 これは佐伯「正論」に対してではなく、ふだんの産経の論調に対する指摘です。産経が敵視する中国や北朝鮮、あるいは左翼全般(産経が仮想敵にしている「左翼」がそのとおりのかたちで実在するかは別にして)はマルクス主義を継承しているのですから、「相手がなにを考えているか」を把握しなければ、戦うこともできないでしょうに。

*1:わりと最近までアナーキストでした。経済という視点がなかったためですが、経済以外では今でもアナーキーかもしれません。