黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

古森義久氏、悲痛に叫ぶ。

ブッシュ政権はなぜ北朝鮮を「テロ支援国家」指定から解除するのか――日本の拉致はどうなる? - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/616380

 ライス国務長官が「北朝鮮が核開発について満足できる申告があればテロ支援国家指定を解除する」と述べたことについて、「その解除にはもう日本人拉致事件の解決、あるいは解決への進展がなくてもよい、というのです」と憤慨しています。というのはほとんど見出しと同じ内容ですが、とにかくそれしか言っていないので。
 今日の一面に掲載されたらしい「【背信の論理 テロ指定解除】(上)拉致軽視「欠陥の融和策」」という記事を引用しているのですが、ネット上には出ていないようです。


 まず、根本的な認識の問題点から指摘します。
 日本人拉致問題で進展があったことを受けてのライス発言ではないかとわたしは思います。12日までの日朝協議で、拉致被害者の再調査と「よど号」事件犯人グループの引き渡しが約束されました。再調査の約束があてにならないのは言うまでもありませんが、「よど号」グループは拉致の実行犯を含み、実行犯の引き渡しは拉致問題についての大きな進展と言えます*1。しかし、この古森記事を含めた産経新聞の報道や論説を見ていると、なぜか再調査のことばかりで、「よど号」グループ引き渡しについてはスルーしていると言ってもいい状態です*2
 「生存している拉致被害者は洗脳され工作員にされているのではないか。重要機密や不法工作の実態を知っているため帰国させられないのだ」という憶測がありますが、この前提に従えば、同じく対日工作員として活動していた「よど号」グループを取り調べることで、重要な事実が明らかになることも期待できるのですが。


 さて、古森氏は今回のライス発言に、「変節とか背信と評しても、そう的外れではないだろう」という言葉を投げかけています。「いままでの(俺が報じてきた)話と違うじゃないか」というわけです。
 ブッシュ政権はずっと、「指定解除には拉致問題解決への進展が必要だ」としてきました。「拉致問題の最終的解決が必要だ」とはひとことも言っていません。今回の判断はブッシュ政権の変節でも、家族会やまして救う会などへの背信でも、なんでもありません。最初からそんな約束はなかったのですから。古森氏は、勝手に過剰な期待をかけて「裏切られた」とわめいているだけなのです。
 家族会などの訪米団に対してブッシュ政権がなにか約束した、と古森氏が報じるたびに、「米国は米国の都合で動くんですよ? これって単にリップサービスじゃないの? 古森さんははしゃぎすぎなのでは?」と指摘してきたつもりです。もちろん、古森氏の期待どおりに、米国が積極的に動いて北朝鮮がそれを受け入れ拉致問題の最終的な解決につながれば、それは理想的だったでしょう。ただし、あくまで、理想です。
 最後に古森記事は、六者協議からの脱退や米国への公式な反対表明など、いくつかの(かなり決定的と思われる)選択肢を示して、福田政権はこれからどうするのか、と問いかけています。あれだけ騒ぎ強硬策で突っ走りながら1年間で拉致問題になんの進展ももたらさなかった安倍政権と、8ヶ月でいちおう、ほんのわずかでも、進展させられた福田政権。少なくともこの問題に関しては、わたしは福田政権の方を支持します。それにしても、古森氏がここまでの対米強硬策を提示するとは、驚きました。
 「なぜ解除するのか」という古森blogの見出しは、「解除する理由を解説します」という意味ではないようです。これは古森氏の、悲痛な叫び声なのではないでしょうか。


 エリ・エリ・レマ・サバクタニ (神よ、神よ、なぜ私を見捨てるのですか)*3

おまけ。

北京五輪で宗教弾圧 米公聴会で当事者証言 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080621/amr0806211946014-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080621/amr0806211946014-n2.htm

 古森義久・米国議会傍聴人による記事です。(上の記事を探そうとして)たまたまMSN産経ニュースを開いたら、トップに来ていました。中国で宗教弾圧といったら法輪功だと思うのですが、公聴会では取り上げられていなかったんですかね。もちろんというかさすがにというか、チベット仏教弾圧については報告があったようですが。

*1:もちろんその他に、明確なテロ事件である「よど号」事件の犯人を隠匿していたことも「テロ支援国家」の根拠とされていたわけで、その状態の解消も指定解除に大きな影響があったでしょう。

*2:たとえば今日の「産経抄http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/154908/ もこの文脈でした。

*3:はてなダイアリーキーワードの解説にもあるように、十字架上のイエスが言いかけて息絶えたこの詩句には「それでも私は神を信じます」という信仰告白が続きます。