黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

古森義久氏、米国に奏上する。

 17日から古森blogへのツッコミをさぼっておりエントリもよく見ていなかったので、溜め込んじゃったなあ、まずいなあ、と思いつつ見出しを確認したら、ちょうど(1)〜(3)完となっていて、正直助かりました。実はやはり相性がいいのかも(笑)。

四川大地震日中関係を変えたのか――米側への報告(1) - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/611128

福田首相の対中姿勢は日本国民を怒らせた――米側への報告(2) - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/613336

日本も中国の人権問題に目を向け始めた――米側への報告(3)完 - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/614219

 ジョージタウン大学のロバート・サター教授がまた登場しています。というかよく読むと、ひとつの公開セミナーの話題を何度にも分割して引っ張っているんですね*1
 このセミナーのスピーカー3人のうち、George Mason University のサイトにある Ming Wan教授のプロフィールは http://chss.gmu.edu/chss/faculty_staff/index.cfm?personID=26990 。つーか、カタカナで書かないでください、頼みますから。また、 Georgetown University の Robert G. Sutter 教授のプロフィールは http://explore.georgetown.edu/people/sutterr/ で、このページや後述のEWCのページでは、"Visiting Professor"になってるんすけど。客員教授なら普通、そう明記しないかなあ。
 客員教授という言葉で思い出してついでに調べてみたのですが、杏林大学総合政策学部( http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/general_policy/staff/list.php )および大学院国際協力研究科( http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/graduate/international/staff/list.php )の教員リストを確認すると、古森義久氏の名前が消えていますね。もう客員教授ではないということでしょうか。以前は正式な杏林大学教授だったはずの田久保忠衛氏の肩書きも客員教授になっています。古森氏の「SAFETY JAPAN」のプロフィール( http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/index.html )は「現職:杏林大学客員教授」のまま更新されていません。大学側が教員としていない人が大学教員を名乗っちゃったら、ちょっとまずいんじゃないでしょうかねえ。セミナーでの古森氏の肩書きはいつもどおり、"Editor-at-Large of The Sankei Shimbun"(産経新聞編集特別委員)になっています。
 これもあいかわらずなんですが、そもそもこのセミナーが開かれたという「ワシントン東西センター」の検索結果は12件(うちノイズ1件)、古森氏の記事とblog、その転載しか出てきません。日本でもだいたい、「イースト・ウェスト・センター(のワシントン支部)」で通っているようです。East-West Center in Washington で5月30日に開かれたイベントについてば、EWCのサイトにアフターレボートが出ています( http://www.eastwestcenter.org/ewc-in-washington/events/previous-events-2008/may-30-2008-managing-sino-us-japan-relations/ )。


 やっと本論に入れます。通しの見出しが「米国での講演」またはせいぜい「米国での報告(リポート」ではなく「米側への報告」になっているあたりが、実になんとも、古森氏らしくてよいですね。
 (1)は古森氏のスピーチ、四川大地震への救援活動、特に自衛隊機派遣問題で日中関係が温暖化していることを解説しています。まあ、前振りですね。
 (2)では日中共同声明が表面上は温暖化を示しているが、そこに述べられなかったことが重要だとして、筆頭に「東シナ海のガス田開発と尖閣諸島領有権の問題」を挙げています。二つの問題についてそれぞれ、ここ数日で大きな動きがあったことは皮肉ですね。そしてこの問題や中国の軍拡について「これら4案件は日本国内では連日、議論され、懸念され、一般日本国民の思考の対象となっている」と指摘しています。どこの一般国民だよニッポソ国民しか見てないんでしょうか。また古森氏は、毒ギョーザ問題と米国牛BSE問題の対比に、あいかわらず非常にこだわっています。これについては後述します。中国産食品問題についてはたしかに今年初めごろ、日本国民がパニックになり、3月のチベット弾圧にも怒りを沸騰させましたが、5月時点ではピークをとっくに過ぎ、スーパーの店頭では冷静に対処しつつ日中首脳会談を歓迎(あるいは無視)していたのが普通の日本国民ではないでしょうか。
 (3)の結論では、日本国民の反中姿勢を米側が軽視している、と警告しています。米側は「中国を非難する日本国民を単に「右翼」とか「ナショナリスト」と呼んで片付けるというミスを冒している*2と言っていますが、日本側から見たって同じです。食品安全問題とガス田問題を結びつけて考える人の方が、やはり特殊ではないでしょうか。
 まあそんな感じの、古森氏による「米側への報告」でした。


 後回しにした米国産牛肉のBSE問題について、以前から書いておきたかったことを少し補足します。これは縦割り行政の弊害と見るべきなのかもしれませんが、加工食品全般の輸入を禁止する法律はないけれど、他国の家畜に伝染病が発生した場合にその肉を輸入禁止する仕組みはずっとあって、たいていなにかが発動しているんですね。鶏インフルエンザとか口蹄疫とかで、どこそこからの鶏肉や豚肉の輸入が止まった、再開した、というニュースはたびたび流れます。BSEも、この家畜伝染病対策のひとつとして扱われているだけです(それが正当かどうかはまた別の話として)。こういう話に注目しない人は気づかないかもしれませんが、輸入停止措置に動きがあるたびに、卸売りに近いところでは食肉の値段が乱高下します。もちろん輸入量が多い国が輸入停止になるとそれだけ影響が大きくなり、その最大の例が米国産牛肉だったというだけです。
 余談ついでに、ガス田問題が合意に達しましたが、今回のエントリも含めてこの件にたいへんこだわっている古森氏は、どんなリアクションを示すのでしょうね。産経「主張」は一定の評価を示していますが*3

*1: 前回の記事については http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080615/1213538099 参照。

*2:ここで古森氏はなぜか、"nationalist"という単語を否定的な文脈で使っています。

*3:6/19【主張】日中ガス田合意 やっと対等の交渉可能に http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/154311/