黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

古森義久氏、三角関係を否定する。

 厳密には14日23時過ぎのエントリです。古森氏は、日本がもうサマータイムを導入していると勘違いしているのかな。

日米中は正三角形ではない――加藤紘一氏の持論を否定する
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/609512

 さて、加藤紘一氏や何人かの政治家・論客が唱える「日本国は米中と等距離外交で行くべき」という論に対して、古森氏が否定しています。おそらく全面的に反論し完膚無きまでにやりこめてくれるのでしょう。わくわくしながらエントリを開いてみました。
 ……前置きのあと、6月5日付の以下の記事を転載しているだけで、加藤氏への反論は1行だけです。日米が同盟関係にあることはわかった上で正三角形論が主張されているのですから、その先に言及しないと、反論にもなんにもならないのですが。
 「共通の価値観に基づく同盟のきずな」というという古森氏の言い方が、やおいチックで実に気持ち悪いですね*1。気持ち悪いとか主観的な評価をしてはいけないのかもしれませんが、古森記事も結局は主観的なのですから、別にかまわないでしょう。やおい的に言っていいのなら、米国の片思いに対して日本国はツンデレでいいんじゃないでしょうか。誘い受はもうお腹いっぱいですよ。*2

米国の政策構図 日中は「非対称」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/150741/

 エントリの事実上の本文になっている記事ですが、これは記事の見出しにもあるとおり、あくまでも米国の視点から「米国は日中を対等に扱っていない(はずだ)」という主旨のものであり、しかも、一人の元高官の講演を紹介しているだけです。それなら加藤氏の意見を「内閣のスポークスマンや現政権党の最高幹部を歴任した元高官の発言」として、日本国の政策を代表するかのように報じることもできますよねえ。
 まあ仮に、このロバート・サター(Robert G. Sutter)教授の講演が米国外交政策の真実を突いているとしても、日本国の外交とは(原則として)関係ありません。また、「いままでの現実がこうだった」という話をいくらしても、「これからこういう外交をするべきだ」という加藤氏の主張への反論にはならないし、もちろん否定することもできません。古森氏は、いったい正三角形論のどこをどう批判したつもりになっているのでしょうか。
 逆に言えば、日本国が対米・対中の等距離外交をしたとしても、米中関係の距離に介入できるわけではないですから、加藤氏の正三角形論も、幾何学的には間違っています。その気になれば批判はいくらでもできるのに、なぜわざわざ古森氏は明後日の方角に向かうんでしょうねえ。日米中が世界で最も重要な三国間関係(のひとつ)だという前提で、日本国が対米にしろ対中にしろ属国意識を持たず、三者対等の関係だと認識して行動すれば、自然に正三角形になっていくはずです。たとえば、20世紀後半に最も重要な三国間関係だった米ソ中関係では、中国がソビエト共産党の指示に従って米国と対峙していた時代から、中国が第三世界のリーダーとして自立していくにつれて、正三角形に近づいていったことが思い出されます。「属国意識を持たず自立する」という発想すらできない人には、理解できないのかもしれませんが。
 ついでに、この講演をしたサター教授も、徹底して日本国を属国扱いしているように見えます。この人には中国関連の著書が多いようで、古森blogにもAmazonの書影が紹介されていますが(たぶんあいかわらず無断リンク)、日米問わず、中国脅威論の本ってどうして表紙がおどろおどろしいんでしょうね。Amazonで「古森義久 中国」と検索し出てきた書影を眺めていると、目が痛くなってきます。

*1:やおいを否定するわけじゃないですが、あれはファンタジーだからいいのであって、生臭さを含むような表現になるとどうも。

*2:このへんのBGM:『トライアングラー坂本真綾