黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、誤解を招く。

 あらかじめ警告しておきますが、リンク先にはまた意味もなく死体写真と思われるものが貼り付けられているので(エントリ最下部)、閲覧にはご注意ください。

「私は10歳でチベットを脱出し、35歳で日本人になった」――ある医師が語るチベット民族の悲劇 - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/575936

 「文藝春秋」6月号に掲載された、西蔵ツワン*1・武藏台病院副院長の手記に感動した、という話です。
 概略を読んだだけでも感動的な話ですし、古森氏は「日本在住のチベット人といえば、ペマ・ギャルボさんしか知らなかった」と言っていますが、チベット出身者をギャルポ氏ぐらいしか知らなかったのはわたしもそうだし(それも以前から知っていたわけでなくこの3月以後だし)、いろいろな意味で同感できる内容です。別におかしなところはない――いや、ちょっと待ってください。「日本在住のチベット人」? 他に「西蔵氏は本来の名をツワン・ユーゲルというチベット人」という表現も出てきます。西蔵氏は日本人ですよ? 自分でエントリのタイトルに書いているじゃないですか。
 じゃあ「チベット国民」というのがいるのか、「中国在住で国籍登録されているチベット族」「インド在住で国籍登録されているチベット族」がいるだけじゃないか、彼らを「チベット人」と呼ぶのだから、日本在住で国籍登録しているチベット族チベット人と呼んでもいいじゃないか、と言われればそうかもしれませんが、なんかやっぱりそれはおかしいんじゃないでしょうか。どうも古森氏は、「民族」と「国籍」の区別が付かず、「国籍」を異様に軽視する(言い換えれば「民族」を異様に重視する)傾向があるようです。しかし、国籍を話題にしているときに、その人物の国籍が今どこにあるか、というのは重要な点で、誤解を招く表現は避けるべきところでしょう。「しかし日本にはいろいろな人たちがいるのだと、改めて痛感しました」とか、とぼけたことを言っていていいんでしょうかね。
 かなりどーでもいいことですが、古森氏はまたコピペのやり方を間違えて(なにをどう間違えたのか、修正も不可能だったのか、見当もつきませんが)、引用部の表題である「ツワン先生からのメッセージ」という画像が文中に混じってしまっています。どこからどこまでが引用であるかを明確にするのは著作権上も基本だし、そもそも文筆家としての礼儀ってもんじゃないですかね。ついでなのでいちおう説明しておきますと、拙blogでは段落下げがまとめての引用、カギ括弧付きの斜体(強調文字)が文中での引用、それぞれわかる範囲で出典を示す、という方針でやっているつもりです。

*1:にしくら・つわん