黙然日記(廃墟)

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産経抄の現実感覚。

産経抄】5月6日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/142800/

 昨日に引き続き、愛知県の女子高生殺害事件を取り上げています。映画『となりのトトロ』を引き合いに、かつてトトロが存在していた闇の中に、今は子供を襲う悪魔が跳梁跋扈している、と説いています。
 映画『となりのトトロ』のテーマは、あえていえば「陰翳礼賛」です。ふつうにテーマを語れば「失われつつある、人間の隣にあった自然」でしょうが、その「自然」とは、文明(電灯)の光が及ばぬ「闇」でした。アニメ映画を通して見る「闇」は優しいかもしれませんが、実際に存在する自然の「闇」は、常に獰猛です。
 新興住宅地という名の中途半端な田舎で、映画に描かれた時代よりいくらか後にわたしは育ったのですが、通学路の途中には、“トトロの森"を思わせる雑木林を抜ける道がありました。その道に街灯がついたときの、「これで安心して子供たちを学校に通わせられる」という親たちの安堵を覚えています。――今でもその道には、「ちかんに注意!」の立て札があります。近辺には、いまだに街灯のない道もないわけではありません。
 『トトロ』の世界は21世紀の現在と隔絶してはいないし、現在にある恐怖は、『トトロ』の時代にも存在していました。引用されている映画の場面で、なぜ村人たちが必死になってメイを探したのか、その理由が産経抄の筆者にはわからないのでしょうか。迷子のメイはトトロが助けてくれました。でもそれは、幻想の物語です。優しい“トトロの闇"なんて、現実には存在しません。現在にも、過去にも。
 防犯カメラのくだりに到っては、この人がいったいなにをどのように勘違いしているのか、見当もつきません。防犯カメラの前に街灯をつけるのが先決、というのが、広い日本の現実なのです。「一部の文化人」でなくても、そんな防犯カメラの設置には反対するでしょうね。