産経「正論」の相当な強弁。
現在の中国政府のやり方、特に言論状況について批判的な考えをお持ちの方に質問します。
1.ある中国人映像作家が、中国政府の言論統制に反発し、天安門事件に前後して外国へ事実上の亡命を行い、その国で創作活動をしています。あなたは彼の行動を支持しますか?
2.その映像作家が、亡命先の国で「中国政府の代弁者に違いない」と非難され、また作品の発表を妨害されました。この事件に対し、あなたはどう思いますか?
質問の前提に従えば、どちらの答えも決まりきっていると思います。映像作家の行動は支持されるでしょうし、彼の背景を無視した理不尽な非難は批判されるべきでしょう。
説明するまでもありませんが、この「映像作家」とは李纓監督のことです。
さて、今日の「正論」も映画『靖国 YASUKUNI』問題がテーマです。
【正論】岡崎久彦 再論「靖国」・官僚の偏向のにおいがする - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/140130/
靖国神社と岡崎氏といえば、この「正論」欄で「遊就館から未熟な反米史観を廃せ」と唱えたことが真っ先に思い出されます*1。拝米のためなら靖国も見捨てると言い放った米国の代弁者が、どんな論法で「中国政府の代弁者」を攻撃するでしょうか。
岡崎氏は、いきなり上記の質問2.で批判したような、「中国政府の(南京事件や百人斬り問題での)代弁者」だといった決めつけをしてから話を始めています。他者のフィルターをかけて歪めた形での内容紹介をしてから、内容ではなく助成の正当性のみを問題にする、と言います。そして助成規定もこれも都合のいいように歪めた紹介した上で、「右のような条件を比較考量して見ると、政府の助成は正当であると言うためには相当な強弁が必要なことは誰が見てもわかる」と、誰が見ても相当な強弁を繰り広げています。
もちろん、事実誤認もてんこ盛りで、「政府が国民の税金から助成金を出している」という前提で話を進めているのは、たぶん本気でそう思っているのでしょう。
しまいには、文化庁の役人は確信犯的にこの映画に助成したのだ、それは自分たちの世代(岡崎氏は1930年生まれ)と違って、今の役人は日教組から教育を受けて左傾化しているからだ、とまで飛躍してしまいます。岡崎氏にとっては深刻な事態なのでしょう。なにしろ、日本人の九割方が日教組の影響を受け左傾化してしまったのですから。
まあ、岡崎氏が「戦後生まれは駄目だ」と思う気持ちはわかりますよ。前首相のブレーンを務めた経験がおありですからね。
*1: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20060825/1156505670 参照。今読み返したら自分の文章が下品でびっくりしました(笑)。