黙然日記(廃墟)

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産経湯浅記者、現実だと信じる。

【くにのあとさき】東京特派員・湯浅博 国益発言のどこが悪い  - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080422/biz0804220305000-n1.htm

 湯浅特派員というと、目についた範囲では必ず面白い記事を書いているので、産経記者の中でももう少し注目されていいのではないかな、と思っています。古森義久・編集特別委員兼論説委員は、論評抜きの短い記事(かつ誤訳や捏造がない)ならばちゃんとまともな記事を書けるし、花岡信昭・客員論説委員は連載コラム「政論探求」でまともなことを書く場合もあるし(その分、外れはじめるととんでもないことになるから面白いのですが)、ここまでアベレージを保って面白い記事を書いてくれるのは、他に阿比留瑠比・政治部外務省兼遊軍担当記者ぐらいではないでしょうか。
 このコラムも、期待に違わぬ内容でした。朝日新聞主催の講座に対立意見の代表として呼ばれた湯浅記者は、世界市民」「正義」を掲げる朝日新聞の理想主義に対して、産経新聞は「国益」の現実主義だ、と講じてきたそうです。そのあとは例の、国際放送で国益うんぬんという騒動に話が進むわけですが、この件の産経側の対応については先日のエントリ*1で詳しく取り上げたし、特に新しい内容もないので省略します。
 ひとつだけ、湯浅記者が立った講座の担当者である上智大学の音好宏教授が、最初の朝日記事に「公共放送へ配慮欠く」とのコメントを寄せていることについて、スポンサーに気を遣って気の毒ですね、みたいな文句をつけているのが興味深いですね。それならば、産経記事に「公正な報道が信頼性に」というコメントを寄せた松田和司氏は、いったい誰に気を遣ったことになるんですしょうか。むしろこう言われると、産経の論調に合うコメントを寄せていた田久保忠衛氏と井尻千男氏が、どこのスポンサーに気を遣ったのか、ということが気になってしまいます。
 なんというか、基本的なツッコミが一言で終わってしまうので、こうして長々と前置きをしてきたわけですが、そろそろいいかな。
 産経は現実主義じゃなくて、国益」の妄想主義だろ、と。*2 *3

*1: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080419/1208612162

*2:「妄想」という言葉にはいくつかの意味がありますが、特に精神医学では、「客観的には不合理なのに本人は現実だと信じ込んでいる考え」を意味します。たとえば、「電波が俺を監視している」といったたぐいです。

*3:という文章を書き上げたところでよそ様を巡回していたら、ちょうどkechackさんが、政治的な《実利派》と《理念派》について興味深い論考を書かれていました。 http://d.hatena.ne.jp/kechack/20080422/p1 この区分で言えば、湯浅氏および産経は、《実利》であるはずの“国益"を《理念》として掲げているわけです。