古森義久氏、米国の立場を我がものとする。
中国は日本との東シナ海紛争を解決する気はない――アメリカ海軍専門家が証言 - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/548050
やたら長いと思ったら、海上保安庁のサイトからのコピペと*1、月刊「WiLL」に掲載された文章のダイジェストが大半でした。
私が月刊誌WILL5月号に書いた「中国の尖閣戦略 目的は石油じゃない」という論文の抄訳です。
古森氏が「WiLL」に書いた文章(それが“論文"なのかはともかく)をまだ見ていないのですが、どうやら古森氏の文章は日本語ではなかったようですね。翻訳が必要な(ダイジェストであれば「抄訳」と表現すべき)ものだったのでしょう。
その内容は、米議会の政策諮問機関である米中経済安全保障委員会が2月27日に行った公聴会についての報告です。月刊誌掲載記事の紹介ということで多少のタイムラグは仕方ないと思いますが、「WiLL」5月号の発売は3月26日のことなのに、なんでいまごろこんなエントリを上げるんでしょうね。雑誌の売り上げを気にするなら、もっと簡単な「抄訳」で発売日直後に宣伝すればいいのだし。よほどblogに書くことがないんでしょうか。いくらでもあると思うんですけどね、イラク戦争の最新状況とか。古森blogが最後に「イラク」を表題にしたのは、じつに1月11日のことです。
日中関係に関して米国は第三者である(だからその分析は客観的なもので信頼できる)、と主張していますが、沖縄に巨大な基地を抱える米軍が、東シナ海戦略について第三者とはとても思えません。
古森氏の「WiLL」掲載記事は、ピーター・ダットン米海軍大学教授の発言をかなり長々と引用しています。以下、その引用をもとに検討していきます。
中国政府は、(領土問題をその一つとする)日本との対立を、国内のナショナリズム感情を煽るのに利用している、という分析があります。たしかにそういう傾向はあるし、この中国政府の姿勢はとても誉められたものではありませんが、敵国あるいは旧敵国への感情を利用してナショナリズムを煽るのは、どこの国でも見られる現象でもあります。たとえば日本での、つい数十年前の対米戦争や空襲・原爆、あるいは占領時代の“押しつけ"を強調する自称ナショナリストたちは、中国政府とどう違うのでしょうか。*2
そもそも、自国が定めた国境線に神経質になるのはどこの政府でも同じであって、だからこそ古森氏も(日本政府が領土と主張する)尖閣諸島の問題をことさらに取り上げているのではないですか? 自国の領土がどうでもいいなら、この問題を取り上げる必要もないはずですよね。
古森氏は、ダットン教授の分析は冷静なものであり、中国を敵視して日本の味方をする理由はない、とも言っているのですが、だとすると古森氏お得意の日米同盟は、いったいどこへ行ってしまうのでしょうね。日本の“国益"を語るために、米国の国益を検討する場の議論を持ち出してくることが、そもそもこうした矛盾の元凶なのですが、古森氏が果たしてそれを理解しているか、理解できるのかどうか。