「靖国」上映中止、各紙の社説。
昨日のエントリ*1の本文部分を踏まえて、見てみましょう。社説のみならず朝刊コラムで扱っている新聞も多いので、そちらも見ていきます。
一般紙。
毎日
余録:自由 - 毎日jp
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20080402k0000m070154000c.html
ベンジャミン・フランクリンの言葉「自由と引きかえに安全を求めようとする者は、自由にも安全にも値しない」を引用しています。
社説:「靖国」中止 断じて看過してはならない - 毎日jp
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080402k0000m070158000c.html
タイトルも激しい口調ですが、内容ももっとも厳しい批判になっています。警察の責任も各紙の中でもっとも強く指摘しています。
朝日
天声人語 - asahi.com
http://www.asahi.com/paper/column20080402.html
「靖国」上映中止―表現の自由が危うい - asahi.com
http://www.asahi.com/paper/editorial20080402.html
ある意味予想どおりで、ここがポイント、という紹介をしづらいのですが、全方位に向けて苦言を呈しているという印象。
読売
4月2日付 編集手帳 - YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20080401-OYT1T00805.htm
映画館は少しの勇気を、世間は表現の自由が脅かされることに少しの気がかりを、警察は少し強めに監視の目配りを――各人が“少し”を持ち寄るのみである
いい文章ですね。しかし「社説」はまったく違います。
「靖国」上映中止 「表現の自由」を守らねば(4月2日付・読売社説) - YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080401-OYT1T00816.htm
見出しはこうですが、文化庁関連団体が公的助成金を出したことそのものは批判しており、また抗議によって集会が中止された例に櫻井よしこ氏の講演を挙げるなど、よく言えばバランスを考えている、悪く言えば「本音は別だろ?」という印象です。
日経
「春秋」、社説ともスルー。いつものことですが。
ブロック紙・地方紙
靖国(4月2日) - 北海道新聞:卓上四季
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/84926.html
映画「靖国」 上映こそ政治家の責務(4月2日) - 北海道新聞社説
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/84924.html
北海道新聞が力を入れており、社説・コラムで扱っています。
『靖国』上映中止 自主規制の過ぎる怖さ - 東京新聞社説
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008040202000319.html
中日新聞・東京新聞は社説のみで「中日春秋」「筆洗」では扱わず。稲田議員の言い分も(実名を出さず)引用し、映画館側の判断を中心に自粛の弊害がテーマです。
西日本新聞はスルー。沖縄タイムズ・琉球新報も取り上げていませんでした。伊勢新聞はどこに社説が載っているのかわからなかった(笑)。地方紙全部はさすがにチェックしきれません(47NEWSからリンクがあるので以前に比べたら便利なんだけど)。
産経。
朝刊コラム「産経抄」*2は、まったく別の内容でした。産経新聞が筆頭になって煽っていた「四月パニック」が起きなかったことへの不満を述べるという、これはこれでとんでもないものなのですが。パニックになってほしかったのか? 騒乱罪予備とかに当たらないんだろうか。
さて、問題の「主張」(社説)です。
【主張】「靖国」上映中止 論議あるからこそ見たい - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/134493/
目に見える形での妨害行為があったわけではない。映画館側にも事情があろうが、抗議電話くらいで上映を中止するというのは、あまりにも情けないではないか。
日付を1日間違えていませんか? 閏年の計算を忘れたんだろうか。とにかく、嘘ばっか書いてあります。とりあえず、いきなり見出しと内容が無関係というところで、ネタ文章と判断せざるを得ません。産経新聞自体が報じていなくても、他の報道を見れば「目に見える(どっちかというと耳に聞こえる)妨害行為」があったことはわかるのに、自紙が報じていないから存在しないという態度なんですね。ほとんど『人民日報』か『労働新聞』なみの信頼性です。
「憲法の理念をあえて持ち出すほどの問題だろうか」という記述自体もとんでもないのですが、サラ金の違法金利擁護に憲法の生存権を持ち出したのは、どこの新聞でしたかねえ*3。
どっからこういうわけのわからない“社説"が出てくるのかと疑問に思うところですが、よく読むとほとんどが稲田議員側の立場で言い訳を代弁する内容です。「私たちは悪くないですよー、映画館側が悪いんですよー」とおちょぼ口で唱えて責任逃れする代議士と、その言い分を“社説"としてそのまま宣伝する新聞が、この日本国に存在するのかと思うと、あまりに情けなくて泣けてきます。
Prodigal_Sonさんがすでに詳細にツッコんでいますが*4、ツッコめばいくらでもツッコめるし、一方でもう放置するしかないんじゃね?という虚脱感にも襲われてしまうような、そんな産経「主張」でした。