古森義久氏、人種問題に言及する。
オバマ候補についに人種問題での危機か――「反米」過激派の黒人牧師とのきずな - ステージ風発：イザ！
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/516560
バラク・オバマ氏が長年師事してきたジャレマイア・ライト牧師が問題発言をしていたために、オバマ氏が窮地に陥っていると報じています。
ここに引用されている「アメリカは人種差別の国だ！」「アメリカはウソをつく！」といったライト牧師の発言は、メディアによって断片的に切り取られたものですから、検証してみる必要があるでしょう。
米大統領選：オバマ氏師事の牧師発言で波紋 ９・１１テロ - 毎日jp
http://mainichi.jp/select/today/news/20080316k0000m030053000c.html
「我々（米国）は広島や長崎で、（同時多発テロで死傷した）数千人よりはるかに多数の人々に対して原爆を落とした」〜「海外で行ってきたことが自国で起きただけなのに怒っている」
弁明会見前の毎日新聞報道や、後掲の産経新聞記事では、同時多発テロと原爆投下を比較した発言が引用されています。このライト牧師の発言が、「だから同時多発テロはたいした問題ではない」という意味なら認めがたいものですが、日本人にとっては少なくともインパクトのある発言なので、古森氏がこの発言を引用しなかったのは不思議です。まさか、《原爆投下という米国の罪》を認めたくないから、という理由ではないと思いたいところですが。
同じように、（集団としての）白人が人種差別の罪を背負っていると指摘することも、事実としては間違いとは言えません（公衆の面前で言ってしまうことは問題でしょうが）。ライト牧師の発言では、主語が「我々（＝米国全体）」となっているのに、なぜ人種間対立を煽るとみなされているのか、これは現地の空気を知らないわたしには測りがたいことではあります。
それにしても、ライト牧師が人種対立を煽ったならそれは批判されるべきですが、ハリケーン被害の報道で「略奪しているのは100%黒人なのである」とありもしないことを書き立てた国際問題評論家も、じゅうぶんに非難されるべきでしょう。米国には人種問題の専門家も数多く、たとえば、アメリカ先住民の人権問題に詳しく知日家でもあり、たしかワシントン在住の、Susan Komori弁護士もいます。古森氏は、機会があれば彼女と直接会うなどして話を伺ってみてはいかがでしょうか。
ところで、古森blogの見出し「ついに」という部分は気になります。どういう意味なんだろう（これは皮肉ではなく純粋に疑問です）。
他にも、古森氏の記述にはあいかわらず謎が多いです。古森blogにはこういう記述があります。
3月14日の金曜日、その後の24時間でオバマ氏への全米50%の支持率が一気に44%にまで下がりました。逆にヒラリー・クリントン候補は42%から45%近くにまであがったそうです。
オバマ氏、人種差別解消訴える 牧師の過激発言で沈静化狙う - イザ！
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/131165
今月13日には、ギャラップ社の全米世論調査で支持率50%と、ライバルのヒラリー・クリントン上院議員を6ポイントもリードしていたオバマ氏だが、牧師の発言が報じられた後の17日には支持率は44%と、クリントン氏（47%）に逆転された。
古森氏はいったい、どんな調査を元に上の文章を書いたのでしょうか。下の産経記事（山本秀也記者）によるギャラップ調査とは、オバマ氏の支持率は一致していますが、クリントン氏の数字が食い違っています。調査期間も違うようです。まさか、24時間以内に発表された別の調査と比較しているわけじゃないでしょうね。
古森義久氏、ベタ記事を書く。
ついでのように。
人権侵害国リストから「中国外すな」 米有力議員 - イザ！
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/131169
珍しく古森氏がベタ記事を書いています*1。この手の見出しを見かけたときはとりあえずチェックするものの、たいていは共同電でがっかりすることになるのですが。記事の中身は、すでに今年版のリストから外されているものを復帰させろ、と共和党議員が主張したというもので、はあそうですか、とうなずくしかないもので、まったくベタな記事でした。
まあ、米共和党の対日広報担当者は、こういう記事を流すという細かい仕事でも、真面目に数をこなすべきだろうと思います。担当者が誰なのかはよく知りませんが。
*1:産経も紙面の文字が（また）大きくなったらしいし、実際の紙面ではベタではなく2段か3段になるだろうと思いますが、まだ現物は見ていません。
