黙然日記(廃墟)

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産経、歴史教育を否定する。

日の丸焼く姿も、試合後に露呈した根強い反日感情 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/sports/soccer/124315
 重慶市第二次世界大戦で旧日本軍が爆撃した都市でもあり、反日感情が強いとされてきた。重慶市内の高校では歴史の授業の中で重慶爆撃について必ず学んでいるという。実体験のない若年層も、祖父母らから話を聞かされてきた。

 昨夜の東アジア選手権男子・中国−日本戦は、審判については最初から納得できない笛が多かったものの、後半半ばまでの観衆の抑制の効いた態度には驚きました。ただこれは、抑制というより必要以上の抑圧であって、日本代表のプレイそのものに反応を禁じられていたようです。時間稼ぎでボール回しをしているときぐらいブーイングしてもらわないと、アウェイでやっている実感がなくて興醒め、ぐらいのところでした(笑)。そのへんの、「自分たちでスタジアムを盛り上げる」というサッカー観戦の楽しみを知らないあたりは、日本でも十数年前のサポーターやWC2002の一般観衆も同じだったので、観衆の成長を期待したいところです(現状では無理っぽいけど)。後半半ばから終了まで、中国側のラフプレイとホームタウンディシジョンの意味を理解していない審判の判定*1によって無駄に試合が荒れてからは、抑圧のたがが外れて醜悪なナショナリズム発揚の場になり、記事のような事態が起きてしまったわけです。以上前説(というかかこつけて感想を書きたかっただけ)。
 しかし、その理由を重慶市歴史教育に求める産経の記事には、疑問を持たざるを得ません。東京でも大阪でも、米軍によって空爆されたことを教えない歴史教育があるでしょうか? 産経は先日も「主張」欄で、神奈川県の県立高校が日本史または郷土史を必修科目としたことを賞賛していましたが、横浜大空襲の史実も含めて教えるはずですよね。

【主張】「日本史」必修 歴史が好きになる教育を - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/123340/

 しかしこの「主張」は、歴史の暗い面を教えるな、とも言っているようです。ここで「当時の敵を憎み続けろ」と教えるか、「終わったことだが、忘れない」といった教え方をするかが、ナショナリズムを醜悪なものにするか健全にするかの分かれ道であることが重要なのであって、地域の歴史教育そのものを否定するような冒頭の記事や、事実を事実として教えることを恐れるかのような「主張」は、自分の首を絞めるような言説ではないでしょうか。
 スタジアムが当初異様に静かだったことについて、テレビの実況は「政府側の指示が出ている」と解説していました。東アジア選手権とその先にある北京オリンピックの開催を国威発揚の場として捉え、対外イメージを糊塗するために観客の反応(表現)を押さえ込んだ中国政府は、根本的にものごとを理解していないというか、矛盾を抱えているのだろうと思います。日本を含めた諸外国は中国に対して、自分たちと同じような健全なナショナリズムと自由な表現を求めているのであって、命令によってブーイングを規制されても、最初に述べたように試合の楽しみが失われるだけです。産経新聞は日本を、大嫌いなはずの中国と同じような国にしたいのでしょうか。

*1:微妙な判定で無意識的にホーム有利になってしまうことがやむをえないのであって、あきらかに一方に偏った判定をしていい、という意味ではないはずです。