産経、事件報道について考える。
いつものようにiza!をチェックしていたら、いきなりこの記事が出てきました。
裁判員制度の検証も課題 取材・報道指針-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/116003
鈴木裕一・産経新聞社会部長による記事です。日本新聞協会が指針を発表したことはどうやら推測できましたが、何日に発表されたのかもこの記事からはわかりません。どうやら以下の記事がRSS配信から漏れていて、関連記事としても表示されない状態のようですが、逆ならともかくこれじゃ困りますね。
「公正な裁判」との調和図る 新聞協会が指針-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/116019/
【取材・報道指針全文】被疑者の供述報道などに留意-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/115998/
せっかく日本新聞協会のサイトまで探しに行ったので、ついでに。
日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/
2008年1月16日 裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針
http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/shishin20080116.html
さて、ようやく鈴木記事の内容に触れられます。
他の部分ではわかったようなことを言っているのですが、ひとつ気になった部分があります。裁判所は裁判員に対して、推定無罪の原則や証拠主義をちゃんと説明しろ、と言っていますが、説明しないと思ってんのか? そうした原則はわかっていても、ニュートラルな判断を下すための訓練をしていない一般市民が影響を受けてしまうのが「予断」というものでしょうが。予断を与えないために、裁判所に責任を押しつけないで、報道機関が十二分に注意しようね、というのがこの指針の意味なのですが、少なくとも産経新聞はこの点をまったく理解していないように見えます。また、裁判(司法権力)の監視はもちろん報道機関の重要な役割ですが、裁判員の守秘義務と裁判員自身のプライバシー確保がなにより重いものであることについては、はたして理解しているのでしょうか。
今回の指針、ひいては裁判員制度は、警察・検察がリークする自身に有利な捜査情報を垂れ流してきたマスコミのあり方に、根本から見直しを迫るものとも言えるのですが、そうした自覚もないらしい産経新聞の対応が今から不安です。この鈴木記事は、「いままでの新聞倫理綱領*1と変わらないから報道姿勢も従来と変えなくていい」と思っているふしがあるように見受けられます。極言すれば「いままでどおりセンセーショナルなスキャンダル報道をしてなにが悪い」と言っているようにも思えるのですが、現在の報道が倫理綱領に反していないかを、あらためて見直す、少なくとも襟を正すという気構えはないのでしょうか。
裁判員制度のPRイベントを積極的に引き受け、無理にでも盛り上げようとした産経新聞がこれでは困りますね。というお約束のツッコミもいちおう入れておきますが、ネタツッコミをやっているどころではない深刻な不安を覚えます。