黙然日記(廃墟)

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産経、謎の賞に関わる。

【正論】深田祐介 第1回重光賞受賞の光栄に酔う-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/116144/

 重光葵賞という賞があるそうで、深田氏が受賞の喜びを語っています。はて、そんな賞の発表って最近あったかしらん。そう思ってぐぐってみると、なんと検索結果が8件。公式サイトのようなものはなく、この「正論」と「産経抄」の記事しか出てきません。「重光賞」でぐぐると、(これはまともな勲章である)「旭日重光章」「瑞宝重光章」の誤変換らしきものが大量にヒットするのですが、その分を除くとこちらも10件。すべて今日の「正論」かその引用記事です。公式サイトはともかく、新聞や雑誌でのまともな報道もない(「産経新聞」「正論」を新聞雑誌による報道と数えたとしても)って、いったいどういう賞なのでしょう。小学校の学芸会で「よくやったで賞」というのをもらいましたが、あれと同格ぐらいなのかな。
 そういうわけで参考になるのはこの深田氏の文章ぐらいなのですが、これによると、選考委員は渡部昇一岡崎久彦・工藤美代子・田久保忠衛の各氏だそうです。「正論」のコアメンバーかよ。重光賞の主催は重光氏遺族による基金だそうですが、実質は産経関連という雰囲気ですね。深田氏の受賞理由はラダ・ビノード・パールと重光葵に関する著書が評価されたためだそうです。とするとこれは、先日の渡部昇一「正論」*1の続きみたいなものなのかな。
 もっとわからないのが、上述「産経抄」が昨年8月16日に深田氏の第1回受賞を報じているのに、この深田氏の文章では「昨秋」に連絡を受けたことになっているあたりです。昨年の立秋は8月8日でしたから*2、8月16日前後を「秋」と称してもおかしくはないのですが、どうも一般の感覚からはずれていますね。しかも「昨秋」深田氏に届いたのは受賞の許諾を問い合わせる手紙なので、これが8月8日ぎりぎりとしても、授賞が確定したのは深田氏の返事(電話によるものだったようですが)があってからのはず。それから1週間あるかないかで産経抄が取り上げ、受賞者の喜びの声が発表されたのが5ヶ月後の今日。まったく解せない話ですし、深田氏曰くの「昨秋」が一般的な感覚での秋だとしたら、なおさらわけがわかりません。
 重光葵の功績を賞というかたちで残したいご遺族の気持ちはわかりますが、1億円もの基金は、表彰状かなにかと選考委員のギャランティと、他はなにに使われているのでしょうか。いくら金利安とはいえ、プレスリリースを出す費用もないとは思えません(本当にないのだったら、選考委員を一人減らしてその分の謝礼を回すぐらいのことはしてもいいでしょうに)。重光の理想(これ自体がゆがめられている疑いもあるのですが)をPRする役にも立っていないのでは、なんのための賞なのか。どうも産経「正論」にいいように利用されているんじゃないか、という印象を持たざるを得ません。

*1: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080114/1200290397

*2:去年のカレンダーとか早く捨てようね>自分