黙然日記(廃墟)

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五大紙のうち四紙の論調が揃う。

【主張】プーチン院政 何とも奇怪な政権交代だ-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/109324/

 プーチン・ロシア大統領が後継者にメドベージェフ氏を指名し、自らは首相に転任して権力の座を保つつもりらしいことについて産経「主張」は、口を極めて、といっていい表現で罵っています。まあたしかにあまり感心しないやり方だけど、他紙の様子はどうだろう。と思って見て回ったら、読売*1、毎日*2、日経*3と、表現は産経に比べればまともですが、揃って危惧を表明しているのでちょっとびっくりしました(朝日のみ、社説や解説記事でこの件に触れていません)。それにしても産経は、今日の産経抄*4プーチン批判で、いずれにしても他紙に比べると一日遅れというのはいつものことなのですが、何とも奇怪な紙面になっています。
 個人的な意見としては、今回のロシアの政局はたしかにかなり異様に思うのですが、批判している方もなにかおかしいなあ、と。一応は民主的な選挙で(不正疑惑はそれとして)与党が圧勝し、ひいては大統領の人気も圧倒的であることが証明され、しかし任期切れでこれ以上務められないので、同じ路線の後継者に引き継ぎますよ、と。実態は院政だとしても、民主的な手続きとしては問題ないわけです(問題があるのなら、ロシアの政治制度として大統領経験者は首相になれないように法改正するとかすればいいわけで、このへんになると完全な内政問題です)。また、大統領制の国で任期切れだが支持率の高い大統領が与党から後継者を指名するのは別に珍しくない話で、米国でも現大統領が指名して万が一のときには代理を務める副大統領が次期大統領選挙に出るのは、ごく普通の話です。たしかレーガン元大統領が任期切れのとき、ブッシュ(父)副大統領が立候補するだけでなく、レーガン副大統領という案すらささやかれていたので、米国でも制度上は問題ないのだろうと思います。今回のロシアの政局に問題があるのなら、田中曽根内閣とか竹下派支配とか現在だと森元首相とか、一介の議員以上の役職を持たない個人が影響力を持つあからさまな院政を許容してきた日本の政治が、まず批判されるべきでしょう。
 まあ、プーチン大統領のやり方になにか釈然としないものがあるのはわかります。しかし今回挙げた4紙の社説で、産経「主張」が特におかしいなあ、という印象を受けるのは、議会選挙での与党の圧勝すらおかしい、と言いたげなあたりでしょうかね。そこまで批判するのはロシアの民主主義に対する侮辱だし、総選挙に圧勝したというだけで(しかもロシアのように全体的な支持ではなくシングルイシューでの勝利です)勝手に後継者を事実上指名し、その後継者が無能でも責任を取らなかった小泉元首相をあれだけ賞賛していた産経新聞は、ダブルスタンダードのそしりを免れないのではないでしょうか。


 なんかちょっと論旨不明の文章になってしまっていますが、ロシアの現状を見ると、民主化以来17年を経たのに民主主義の定着という面でまだ危ぶまれるところもたしかにある。しかし、他国の批判をしている場合だろうか。日本だって60年以上(議会開設から120年近く)を経て、どれほどのもんなのか、日本の新聞ならまずそれを思い出すべきだろう、ということですね。