日経・朝日・読売の強者連合。
MSN産経ニュース*1と毎日jp*2が今日から正式オープンしたのでそのネタでも、と思っていたのですが、新聞業界はなにかと騒がしいようで。
とりあえず比較。
以下、各社サイトがこの発表をどのように記事にしているかを見ていきましょう。原則としてWebページのtitleとアドレスをそのまま並べましたが、titleだけでは情報が足りないサイトは行を変えて補っています。また、思いつきですが各記事のタイムスタンプも、タイトルのあとに()で附記してみました。
まずは当事者三紙の記事を。
NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース−各分野の重要ニュースを掲載
日経、朝日、読売が業務提携・ネット事業などで協力 (14:30)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071001AT1D0101A01102007.html
asahi.com:朝日、読売、日経3社がネット・販売分野などで協力 - ビジネス (15時16分)
http://www.asahi.com/business/update/1001/TKY200710010178.html
日経・朝日・読売が提携…新聞配達、共同サイト運営で : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) (14時44分)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071001it11.htm?from=top
ついでなのでリニューアルした両サイトからも。
共同サイト:日経、朝日、読売が提携 事業体設立へ - 毎日jp(毎日新聞) (19時37分)
http://www.mainichi.jp/select/wadai/news/20071002k0000m040068000c.html
社説や主要記事読み比べも、朝日・日経・読売のネット提携会見 - MSN産経ニュース (16:09)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/071001/biz0710011609007-n1.htm
さらに47NEWS*3から共同通信記事、時事ドットコムから時事通信の記事も並べておきます。これで五大全国紙と二大通信社が揃いました。
(47NEWS,共同通信)
朝日、日経、読売が提携 (13:47)
http://www.47news.jp/CN/200710/CN2007100101000328.html
時事ドットコム:日経・朝日・読売が提携=ネットと販売で共同事業−「新聞離れ」に危機感 (17:05)
http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2007100100568
私見。
とりあえず、3社の配列に注目してみましょう。プレスリリースでは「日経・朝日・読売」の順ですが*4、朝日と産経と共同は順序を入れ替えて報じています。五十音順でもアルファベット順でも「朝日・日経・読売」の順番になるので産経と共同はわかりますが、朝日は謎ですな。
共同はタイミングから見て、正式なリリースが出る前に記事を出しているのかもしれません。見出しの順序がリリースどおりになっていないこともそれで説明できます。産経は後述の予告記事と合わせた可能性もあります。しかしやはり朝日は謎。
タイムスタンプは当事者の3社がほぼ揃っているのに対して、共同は異様に早く、他3社は出遅れているというか後回しにしている観があります。
これはもしかして、共同通信は予定稿で記事を出したんだろうか。実は、このような発表が今日あることは、数日前から噂として流れていました*5。業界内のことですから、たぶん記者の皆さんはいろいろ承知の上で会見に臨まれたと思います。しかし、予定稿で出したんだとしたら、ちょっとあれですな。
ちなみにMSN産経も、10:50時点でこんな記事を出していました。
朝日、日経、読売が合同会見へ - MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/economy/business/071001/biz0710011050005-n1.htm
ウェブファーストというのが売り文句なので、入ってきた情報はすぐに出す、という方針なのかもしれません。まあ、こういう形なら記者会見の内容を踏まえずに記事にしても許されると思うし、これを徹底してくれれば面白くはなりそうです。しかし、新聞系のサイトが速報性だけじゃなあ(後述)。
なお、今日からMSN産経ニュース・毎日jpがスタートしていることに触れたのは毎日と時事だけ。毎日は47NEWSにも言及しています。というかそれで存在を思い出しました(笑)。
MSN産経ニュース。
やはり興味があるので、リニューアルの影響を含めて、MSN産経ニュースを詳しく見ていたわけですが。
【ANY会見(1)】「ネットメディアで新聞社の影響力を高めたい」 (1/2ページ) - MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/economy/business/071001/biz0710011747008-n1.htm
予備知識がなければ意味不明の見出しはともかくとして、(1)〜(4)に分割されている記事をさらに複数ページに分割するセンスに呆然。読みづらいったらありゃしない、というか、読まれることを拒否しているのか?と感じました。MSN産経ニュースは、こうした記者会見や刑事裁判公判の模様をまるごと報じるのもひとつの売り文句にしていますが、全部これをやる気か。たまたま今日やっているなにかの公判の記事で確認したら、やはりMSN産経は二重分割をやっていました。同じ記事をiza!は、(1)なら(1)で1ページにまとめています。この階層構造のセンスの悪さはMSの伝統なのかもしれませんが、リーダビリティというものを少しは考えたらどうでしょうか。
一般的に、Webの記事は短いものの方がよく読まれる、という傾向を感じるし、おそらくそうした統計もあって、それに従ってこんな分割をしているのでしょう。しかし、MSN産経ニュースは「紙面と違ってWebでは長文を掲載できるから積極的に載せていく」という方針をアピールしているわけで、長文とわかっている記事を読もうとする人は、長文でもじっくり読むんですよ。ヘッドラインと概要のみを追う読者と、突っ込んだ記事を求める読者で層が分かれているのは、いまさら言うまでもないでしょう。速報性をラジオ・テレビに奪われてから、新聞は「じっくり報道する」存在として半世紀以上定着してきたわけです。ニュースサイトはテレビ以上に速報性があるので*6、そうしたニーズも強く存在しますが、新聞社サイトを引き継いでいるのですから、紙媒体の新聞と同じメリットを求める人もいるのですよ。
そういうことも認識せずにニュースサイトを運営しようとするMSN産経ニュースの今後が、本気で心配です。
毎日jp。
そのMSNから離れて、やっとまともに読めるニュースサイトに戻ってくれた毎日ですが、ニュースセレクト・エンターテインメント・ライフスタイルの三つのカテゴリにしっかり分かれているのは、吉と出るか凶と出るか。産経で言えば(いかん、毒されている……)SANKEI EXPRESS・サンスポ・サンケイリビングの共同サイトみたいな印象で、総合一般紙らしさがないというか、見通しが悪いというか。慣れてくればまた印象は変わるかもしれませんが。
ところで、まんたんウェブにTrackbackを送れなくなってしまった。今までは(承認制だと思いますが)いちおう送れたんですよね。上記七つのニュースサイトが、どれもTrackbackを受け付けていないというのは、ちょっとなんだかなあ。こちらがiza!に慣れすぎてしまったのかもしれませんが。
まとめ。
エントリの見出しを「強者連合」としましたが、かつての朝毎読三大紙+産経・日経の五大紙という構図から、朝読日の三強+毎産二弱という構図に変わってきていることは否定できないと思います。*7
その三強が連合を組むのは不思議なようですが、紙媒体で弱小な分、毎日と特に産経がネットに力を入れていることに対して、危機感もあるのだろうと思います。ネット上では――実際のPVは別として印象としては――三強二弱の構図がまったく逆転していましたから。朝日はそれでも、ニュースサイトの開設も早かったし新しい試みもしているのですが、読売と日経はやる気があるのかとずっと思っていました。このblogでも、読売・日経に言及するのは、大ニュース時の恒例である各紙比較のときと、たまたまGoogle Newsなどで記事が引っかかってきたときだけでした。紙媒体のブランド力があるからなんとかなってきたようなもので、普通のニュースサイトなら両方ともとっくに潰れていたでしょう。
しかし三強は三強なので、こうなると二弱は、せっかく新体制になったのに厳しい運営を迫られるところです。MSNといういちおう大きなポータルに乗っかった産経はまだしも(大枠で見るとこの提携はたぶん失敗だったと思いますが、iza!という保険もかけているのでなんとかはなるでしょう)、いまさら単独でやっていこうという毎日は、かなり苦しくなると思います。あとはもう、Yahoo!と全面提携するしか道は残されていないんじゃないかと思いますが(gooやbiglobeでは駄目で、この場合はYahoo!一択です)、さてどうなるやら。
*1:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
*2:毎日jp http://www.mainichi.jp
*3:47NEWS http://www.47news.jp/ 共同通信と全国のブロック紙・地方紙(ただし産経・日経も含む)が加盟したニュースポータルサイト。どーでもいいんだが、Flash必須でものすごく使いづれえ。
*4:当事者の弁によれば、順番にあまり意味はないそうです。実際はどうだかわかりませんが。
*5:マスコミ板@2chなど。追記:「週刊ダイヤモンド」で既報だったようです。
*6:正確には、ユーザが「見たい」と思った瞬間に常に最新のニュースが提供されているという意味の「速報」です。テレビでニュース番組が始まるのを待つ時間が、最近は無駄に思えてしかたありません。
*7:日経はもともと小さなパイを狙っているので、部数そのものは少なくてもパイの中のシェアでは勝ち組といえるでしょう。少ないといっても産経よりは多いんですが。