黙然日記(廃墟)

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産経新聞、改憲を論ずる。

【欠陥憲法】(上)環境権 降り注ぐ黄砂-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/49189/
【欠陥憲法】(中)海外活動を脅かす9条-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/49307/
【欠陥憲法】(下)厳しい改正条項 足かせ-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/49431/

 施行60年を迎える憲法記念日を前にした産経新聞の特集連載です。いろいろな意味で産経新聞らしい記事なので、産経の考え方に興味のある方にとっては、入門編になるかもしれません。
 特に(上)が面白いところです。憲法に環境権、さらにプライバシー権や“知る権利”を明記することは、わたしも賛成だし、文中に登場する大塚教授のように、いわゆる護憲派に近い立場でも「環境権の記載は必要だ」と認める人は多いと思います。また、憲法に関心がなくても環境に関心がある人はたいへん多いので、そういう人へのアピールとしても、この問題を冒頭に持ってきたのは戦略としてうまいところですね。しかし同時に、上記のようにプライバシー権や“知る権利”の明記も必要だという声もセットになっているのが普通なんですが、そのへんはまったくスルーしています。産経的には必要ない権利なんでしょうかね。
 それから黄砂を例に挙げてむやみに中国を批判していますが、日本国憲法を改正すれば中国の行動を規制できるという発想は、いったいどこから生まれてきたんでしょうか。
 そしてこれ。

 いわゆる近代立憲主義憲法観は「憲法は国の権力を規制し、国民の権利や自由を守るもの」とする。現代はこうした役割に加え、憲法を通じて国や国民が協力してよりよき国家、社会の形成を目指す「新しい憲法観」が提唱されている。

 自民党憲法調査会のレポートに示された考え方*1なので「提唱されている」というのも間違いではないのですが、自民党とその提灯持ちメディア以外、特に法学者などで、この提唱に賛同している人はいるんでしょうか? 今の憲法はもちろん、近代以後の国家という概念を覆す考え方なので、せめてもうちょっと議論が必要なのではないかと思うのですが。
 以後、(中)は集団的自衛権についてで、ある意味では予想の範囲ですが、産経の考え方がよくわかる記事になっています。上・中とも、もっともだと思わせる具体例を並べて、だから憲法改正は必要だ、という論に持っていっているのですが、実はここんとこで論理の飛躍をしています。ここテストに出るから注意ね。
 (下)は硬性憲法(改正しづらい仕組みの憲法)であることを問題にしていますが、硬性憲法という言葉があること自体、そういう考え方が国によっては是認されてきたという証明でもあるわけです。どっちが妥当なのかは素人なのでよくわかりませんが、硬性憲法だから駄目、という理屈は、やはり少しおかしいんではないかと思われます。