黙然日記(廃墟)

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古森義久氏と日本文化。

日本の対外発信と柔道-ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/110353

 古森さんが柔道に熱中している、というだけの話は特にツッコミを入れる必要もなくて、今までたいがいスルーしていたのですが、今日のエントリについて少し考えてみたら、これはちょっとあれかな、と。
 日本生まれの柔道が世界で親しまれていることは、日本人として(日本国民としてではなく)誇らしいのですが、それを日本国の外交と結びつけることに、どれほどの意味があるのでしょうか。文化発信そのものは国策として行うべき、というか、国家の仕事のひとつだろうと思います。しかしそれは、直接的な利益がないから公共の仕事として行われるわけで、見返りを求めるものではありません。以前、 id:pr3:20060810:1155214893 で指摘したことですが、ODA対象国に「つるの恩返し」を贈るような厚顔無恥さは、少なくとも伝統的な日本文化とは縁のないものだったはずです。文化は政治の目的であって、文化を政治の道具にされては困ります。*1

 あと、事実誤認について。いまさらこういうことを書くのも恥ずかしいのですが、連続テレビアニメーションという形式と、この形式でシリアスなドラマを描く手法は日本で生み出されたもので、柔道以上に世界中で親しまれています*2
 また、たとえばフランス語の用語をそのまま使ってフェンシングやバレエを学ぶ人は、広い意味でフランス文化の影響を受けているとしても、たとえばフランス共和国の外交にどれだけの理解を示すものなのか、いささか疑問です。バレエについては、フランスで発達したものをロシア帝国がそのままのかたちで受け入れ、ソ連時代にさらに発展して、今はロシア連邦がひとつの本場として大きな影響力を持っているわけですが、ここに「フランスの価値観の表明」はあるのでしょうか。

*1:異論があることは予想できますが、わたしはこう思っています。

*2:アニメーション映画そのものは米国などで生み出されたものですが、せいぜい2時間の映画しか作れなかったものを、毎週30分で半年や1年続けて十数時間の連続ドラマに仕上げる創作技法や収益システムが日本で作られなければ、現在のようなテレビアニメの隆盛はありませんでした。