黙然日記(廃墟)

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Sankei Expressのメディア批判。

表面しか見ていない「匿名」批判-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/it/internet/37242

 Sankei Expressに掲載された立川優記者による記事。ニュースというよりは記者の個人的な主張っぽい雰囲気ですが、パソコン通信時代は匿名が普通であったことなどから、現在各メディアで批判されている“ネット上の匿名”について考察しています。うーん。全面的に賛同するわけではないけれど、かなり共感できる内容だなあ。この日記の id:pr3:20060916:1158356821 で述べたことと、基本的には共通するんじゃないかと思います。
 “ネットの匿名性”には二種類の意味があります。「議論などのとき相手を特定できない」という意味と、「リアルの身元を特定できない」という意味で、この記事は(この記事に限らず広く見かけるのですが)そのへんをちょっとごっちゃにしている感があります。ついでに、今の2ちゃんねるの“匿名性”は前者の意味であって、後者の意味では特定できないわけではないことは、覚えておいた方がよさそうです。どちらの意味にもそれぞれのメリットとデメリットがあるのですが、ネットにも既存メディアにも共通する最大の匿名の価値は後者の意味で、内部告発などについて告発者の身元を守れることでしょう。ジャーナリズムの世界ではニュースソースの秘匿原則として重視されていることなので、既存メディアがこの点を無視するのはおかしいんですけどね。さらに、権力批判というジャーナリズム最大の目的を、身元を隠して、というと聞こえは悪いですが、安心して行える点も重要だとわたしは思います。本名や身元を明かして権力や巨悪に立ち向かうジャーナリストの勇気には本当に感服するのですが*1、そこまでの勇気がなくても権力を監視できる仕組みがあることは、たいへん重要だろうと思います。


 ところで、この記者はパソ通NIFTY-Serveしか知らないようで、そこもちょっと気になります。徒弟制度という表現もおかしいし、36文字で改行というのもローカルルールじゃないだろうか。Internet初期のUG系サイトにパティオが与えた影響、というのも、なんか違うような気がします。わたしはNIFTYなど大手には参加せず草の根中心に遊んでいたのでそう感じるのかもしれませんが、あれは草の根系の文化にNetNewsの文化が合わさったものに近いんじゃないかなあ。それともやはりわたしが無知なだけで、パティオにも同じ文化があったのだろうか。


 iza!のニュースページには産経新聞本紙・フジサンケイビジネスアイSankei Express・サンスポ・夕刊フジの記事が転載されていますが、Expressだけはどうも雰囲気が違うなあ、という印象がありますね。だからといって特に評価すべきというほどでもないんだけど、というか、他がひどすぎるのか。上の記事もいちおうまともですが、ただ、夕刊フジ2ちゃんねる叩きを他人事のように書いてるのがねえ。記事を作っている側にも、いろんな意味で、同系列の他のメディアとは違うんだ、という意識があるように見えます。

*1:しかしジャーナリストを自称して報酬を受けているからには、権力におもねらないという気概は持っていてほしいと思います。誰のこととは言いませんが。