黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

個人的な憶測ですが。

 昨日の2ちゃんねる閉鎖記事 id:pr3:20070112:1168578061 に関して。今回の騒動がおそらくピークだと思うのですが、Wikipediaにも記述があるように、夕刊フジzakzak)はなぜ去年の9月ごろから、いきなり2ちゃんねる叩きキャンペーンを始めたのか、という疑問があります。フジサンケイグループ全体としてはもともと2ちゃんねるに親和的な(見方を変えれば擦り寄ってくる)面が多く、今日の深夜からは「電車男」スピンアウトの「月面兎兵器ミーナ」も始まろうというこの時期ですが、zakzakだけはムキになって2ちゃんねる叩きをしてるんですね。
 もっとも、一口にフジサンケイグループといっても巨大な企業複合体なので、媒体単位ならともかく、全体の意志をそう簡単に統一できるわけでもないのでしょう。夕刊フジとしては産経新聞本体の赤字を埋めなければならない立場だし、それがなくてももともと怪しげなネタを得意とする商業媒体なので、売れるとなればたいていのことはします。2ちゃんねるのようにユーザも多いがアンチも多い存在には、擦り寄っても叩いても一定の顧客が見込めるわけで(スキャンダラスなネタならなおさら)、商業的な判断としてはおおむね妥当でしょう。


 さて気になるのが、zakzakが叩き路線に走ったきっかけはなにか、という点です。ここで、ある仮説に基づいて、記事を検証してみることにします。

2ちゃんねるの「ひろゆき」失踪…掲示板閉鎖も(2006/09/22)
http://www.zakzak.co.jp/rank2006/topkiji/t2006092201t.html

 zakzakの2ちゃん叩きが始まったのがこの記事だったと思いますが、ここでは井上トシユキ氏がコメントを出しています。「2ちゃんねる宣言」(2ちゃんねる関連で最初の商業書籍)などの著書がある井上氏ですが、現在は中立からやや批判的な立場にいるようです。Wikipediaの記述を見ると、この記事の少し前、7月ごろになにかいろいろあったようですね。この記事には、怪しげな「関係者」は出てきません。
 11月から、「2ちゃんねる逝ってヨシ?〜管理人雲隠れの真相〜」と題された連載特集が始まります。ここにはさまざまな「関係者」が登場します。

1.個人攻撃も放置“無法空間”状態(2006/11/07)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061104_01.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006110728.html

 被害者への取材。

2.ネット社会は止められない (2006/11/08)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061104_02.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006110816.html

 ここでは一般論的なことをコメントする「IT関係者」と「2Ch関係者」。

3.「時効成立まで逃げ切る気だ」(日付なし)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061104_03.htm
2ちゃんねる2Ch)は間もなく死に体になるだろう。訴訟対応のまずさも大きな要因だ」
「西村は無政府主義原理主義者。匿名性こそが2Chの存在意義と考えたのだろう」

 この記事では「2Chの運営に関わる男性」が上記のような発言をしています。他に、ひろゆきの収入を推測する「関係者」と、「先ごろ西村氏と(雑談めいた)会談した男性」。

4.もはや勝手に閉鎖できない(日付なし)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061104_04.htm

 憶測を語る「西村氏と親交のあったIT業界関係者」と、8月危機がらみで商業化しなかったことを非難する「2Ch内部関係者」、転居の事情を語る「関係者」。

【追跡】(5)ひろゆき見たさに大行列(2006/11/13)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061111_01.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006111328.html

 講演会の聴衆に取材。

【追跡】(6)ひろゆき「賠償金ほしけりゃ法律つくれ」(2006/11/14)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061111_02.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006111426.html

 講演会の内容。

【追跡】(7)ミクシィ2ちゃんねる悪質ユーザー侵入(2006/11/16)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061111_03.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006111625.html

 法人化について検討する「関係者」と、「削除人は15人しかいない」とものすごいことを言う*1「内部関係者」、mixiなどを説明する「ITライター」。

【追跡】(8)2ちゃんねる、被害者より広告主重視(2006/11/17)
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20061111_04.htm
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006111723.html

 広告体系について詳しい「関係者」。

ユーザーショック…2ちゃんねる、再来週にも強制執行(2007/01/12)
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007011201.html

 今回の記事です。憶測する「関係者」と、昨日のエントリでも突っ込みましたがドメインや鯖引っ越しについて出鱈目な説明をする「IT業界関係者」。
 全体に、被害者や訴訟関係者、関連機関などの取材コメントもあるのですが、名前を出さない各種「関係者」のコメントを通して批判するパターンが多いようです。


 さて、なぜこんな検証をしたのか。上記の仮説をここで説明します。
 zakzakに「2ちゃんねるには閉鎖に繋がるスキャンダルがある」というネタを持ち込んだ人物約1名がいる。「かつて2ちゃんねるの運営に関わっていた、今の事情にも詳しい」と称する実績はある(実際にはさほど現状に詳しくない)。しかし、今は2ちゃんねるに対して少なくとも批判的であり、できれば潰れればいいと思っている。ろくな知識がなく、「IT専門家」とは名乗れないが「IT業界関係者」なら間違いではない。記事を書いた記者は、彼を信じ切っている(それだけ話がうまい)。それ以外の点では最低限の取材をする力はある記者だが、2ちゃんねる内部の情報については彼に頼り切っている。そして、zakzak2ちゃんねる叩き記事にコメントを出しているのは、毎回肩書きは変わっているが、基本的にその約1名である。さらに言えば、ある特定の有名な人物を想定すると、約1名の条件にぴったり当てはまる。
 こう考えると、非常にわかりやすいんですね。まあ、あくまでも個人的な憶測です。*2


 ところで、「わかりやすい憶測」というのは、とりあえず疑ってかかるのがネットのリテラシーというものです。みなさん気を付けましょう。嘘を嘘と見抜けない人には、(ネットを使うのは)難しい。

*1:削除人が150人ならわかるんだけど、15人ってどっから出てきた数字なんだろう。本気で謎。サーバを直接いじれる運営関係者だけでもその半分ぐらいの人数がいるぞ。

*2:ここまで書いて気づいたのですが、最初に失踪ネタを持ち込んだ人物と、その反響に味を占めた特集連載以後に(自分からか記者が探し出したのかはともかく)絡んできた人物は、もしかしたら別人かもしれません。ただ、特集以後はたぶん間違いないと思うのですが。