黙然日記(廃墟)

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歴史認識。

id:kamayan:20060816#1155668077
だから「若い世代」「学生」は必ずしも「知識」として「現代史」を知らないわけではない。頭の中にバラバラな知識として入ってはいる。問題は、その、頭の中にあるバラバラな知識を、自分の力で自分のものに咀嚼し直すこと、自分のものとして整理し直すこと、これが欠けている。

 実はこれは、我々の世代が受けた「詰め込み教育」の欠点として指摘されていたことそのままで、その反省が本来の「ゆとり教育」、考える力をつける教育だったわけですが、なんか基本的なところでうまくいっとらんようですな。というか悪化しているような。
 個人的な体験から言うと、世界史は固有名詞が覚えられない上にわけがわからなくて大嫌いだったのですが、大人になってから陳舜臣「中国の歴史」を通読して、歴史とはこんなに面白いものだったのか、というショックを受けました。もともとは中国の創世神話を調べるために1巻の冒頭部だけ読むつもりだったのですが、そのまま読み続けて気がつけば、文庫版で全7巻4000ページ近い大作を読み終えていました。歴史書と小説の中間のような書き方で、ある局面では特定の人物や事件を取り上げながら、それが全体の流れの中でどういう位置にあるかを見通すことができるため、相互を関連づけて把握することができます。こうした一貫した視点で見れば、歴史の、その結果としての社会の、全体像を把握することが容易になるのではないでしょうか。こういう良書が現代史にもあるといいのですが。
 いちおう補足しておくと、この本は基本的に中華文明史観で書かれています。もっとも進んだ文化(いわゆる中華文明に限らず)が全世界に恩恵をもたらすべきだという史観で、中国に限らずフランスや今のアメリカにもあるものですね。「軍事力ではなく文化が支配するべきである」という考え方だとも言えるわけで、ある意味ではとても正しいと思うのですが、独善的でもあるわけです。読んでいるときは(歴史初心者だったわけですから)気づかなかったのですが、文化多様主義が言われる現在では不適当な面もあるかもしれません。しかし、読むべき本であると思います。
中国の歴史〈1〉 中国の歴史〈2〉 中国の歴史〈3〉 中国の歴史〈4〉 中国の歴史〈5〉 中国の歴史〈6〉 中国の歴史〈7〉