最近買った本。
わりと話題のところから。
単なる日記。売れないマンガ家(「失踪日記」が出る直前で、世間的には消えたマンガ家と認識されていたころ)の愚痴と不安にまみれた自堕落な日常を淡々と描いたもの。何時に起きて飯はなにを食って図書館でなにを借りた、という記述が大半を占めます。
しかしこれが猛烈に面白いと思うのは、昔からの吾妻ファンだけではないと思います。語り口ということになるんでしょうか。「一気に読むと鬱になるかも」とまえがきにも注意があるし読む前にわたしもちょっと危惧したのですが、むしろ鬱の人こそ読むべきかもしれません。最初から意図的だったかはわかりませんが、高く評価され*1ベストセラーになった「失踪日記」が完成してから出版されるまでの時期に当たる日記です。結果的にせよ、出版が難航した経緯が詳細に描かれることで、どれだけ世間が無理解か、形式的な経済価値で質の高い作品を黙殺しようとしていたか、東販・日販やコンビニが日本の出版流通を支配していてそのお眼鏡にかなわない本は出してももらえない現状であるか、という告発にもなっています。あとがきに到って作品が認められたことを知り、読者は安堵するわけですが。タイトルに反して、根拠なく希望を持たせてくれる本でもあります。
うつうつひでお日記
- 「日本ふるさと沈没」/鶴田謙二他 ISBN:4197701322
「鶴田謙二単独の本じゃない」といって怒っている人をどこかで見かけたんだけど*2、彼以外もものすごい面子のアンソロジーなのに。自分が単行本を買っている作家だけ列挙しても、吾妻ひでお/あさりよしとお/唐沢なをき/トニーたけざき/いしいひさいち/安永航一郎/とり・みきという豪華さ。なんかギャグ系の人ばかり名前を挙げてしまったけど、鶴謙に伊藤伸平/寺田克也/ひさうちみちお/TONOと並べただけで、どれだけ滅茶苦茶な本であるかわかります。できれば(「リュウ」「少年キャプテン」の復活統合という意図があるのなら)石川賢と島本和彦にも描いてほしかったところだけど……。
内容は、知ってる人も知らない人も含めて、パロディとして楽しめる出来。この日記で何度も触れているように原作第一部のファンなのですが、それがなくてもこの本は買っていたかも。高いけど、かなりお買い得な本だと思います。旧作の映画を踏まえて描いてる人が多いので、そちらを先に観ておいた方がいいかもしれません。
日本ふるさと沈没
いちおう1973年版映画のDVDも。
日本沈没
- 「こどものじかん(2)」/私屋カヲル ISBN:4575832618
あえて苦言を呈すなら、陰鬱なシリアスと無理矢理なエロシーンが噛み合っていないかな、と。たとえば本巻冒頭部、黒ちゃんが下着姿で校舎内を走り抜ける場面。二重の意味で意図はわかる(それだけ必死だったという描写&サービスシーン)のですが、キャラを壊しているといわれてもしかたないところかと思います。もともとハイテンションでアップテンポにギャグを連発する作風が持ち味の人なので、シリアスになっても展開が早すぎるというか、説明不足が目立つんですね。
そうした些細な欠点にさえ目をつぶれば、素晴らしい本です。1巻を読んだ人ならわかると思いますが。
こどものじかん 2 (2)
「終わりの始まり」。雑誌を(また)移ったためだけではなく、もうどうしようもないほどに、物語が収束に向かっていることをひしひしと感じます。真山が退場し、森田兄弟の(予想どおりではありましたが)過去が清算され、はぐと竹本が重大な転機を迎える。ものすごい回り道をしてきたけれど、やはり最後はこの二人の話かと。
ところで初版は全部におまけが封入されてるようですが、はっきり言って邪魔。フロッピー壊れたらどうすんねん。
ハチミツとクローバー 9 (9)