黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、年頭になにかに中たる。

【正論】年頭にあたり 日本版〈国境の壁建設〉…国家の安泰図る仕事を提案する 大阪大学名誉教授・加地伸行 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/column/print/170110/clm1701100007-c.html

 小松左京に『アメリカの壁』という長めの短編があります。USAが他の世界各国から孤立してしまっても、お互いうまくやれるのではないか、という問題提起です。問題提起だけでシミュレーションまで至っていないところが惜しいのですが(小松にはそういう作品がたくさんあります。『日本沈没』とか)、この『壁』を思い出す昨今です。
 加地氏は「正論」メンバーの中では比較的相対的にまともな人だったような記憶がかすかにあるような気がしないでもないのですが、年齢には勝てないということでしょうか、今回はかなり壮絶なことを書いています。
 ドナルド・トランプ氏の《見識》、具体的には「国境に壁を作る」といった発言を褒め称え、それを《嘲笑》するメディアをそしります。しかしお二方とも、メキシコから人々が歩いて移入してきていると思っているのでしょうか。加地氏が飛行機嫌いなのかどうか知りませんが、トランプ氏は自家用ジェット機を所有していたはずですが。あ、自家用ジェットしか知らないからLCCとかで移動するという発想がないのか。あるいは鉄道でも自動車でも、たいていは乗り物で移入しているのです。日本国内の不法滞在者は、みんな海を泳いで渡ってきたのでしょうか。
 さらに加地氏は、「壁」建設は肉体的重労働しかできない若者の雇用対策になるとか、とんでもないことを言っています。「肉体的重労働しかできない人々がいる」という前提に加地氏のエリート臭がぷんぷんしますが、それを認めたとしても、教育機会を奪って無用な「壁」建設に10年間従事させて、そのあと30代の青年の雇用をどうしようというのでしょう。
 で、トランプ加地氏が唱える《日本版国境の壁建設》は、島嶼管理士なる制度の創設だそうです。離島や山林を国境警備のごとくパトロールするらしいですが、いったいなにを想定しているのでしょう。産経が「対馬が危ない」「水源が危ない」といった意味不明なキャンパーンを繰り広げていましたが、まさか真に受けている人がいるとは。しかも財源は、在日外国人から《国防税》を取るというもので、そんな国が地球上のどこにあるのでしょうか。自分で《めでたしめでたし》と締めくくっていますが、おめでたいのは加地氏自身です。正月の餅が喉を通り過ぎて延髄にでも引っかかってるんじゃないのか。